再生医療(3)
 
−駄洒落商会会長−
 2001/01/24発行分

  前回までにご紹介しましたように、わが国では再生医療は欧米に比し、5〜10年ほど立ち遅れているものの、皮膚、骨などに関しては、比較的実用化研究が進んでいます。

 上場企業では、多木化学(4025)が、信州大学医学部高岡邦夫教授らと体内に埋め込むと骨に置き換わる新素材(骨を形成する作用を持つたん白質を染み込ませた生分解性樹脂)を開発しています。この素材は、ポリ乳酸やポリエチレングリコールなど人体に無害な高分子を主成分とする樹脂ですが、これに、骨の形成を促す作用を持つたん白質(BMP)を混ぜて成型、生体内に埋め込みます。樹脂は、生分解性があるため体内で少しずつ溶けていき、その際にBMPを放出。生体組織はBMPに反応して骨を形成するため、樹脂を埋め込んだ場所に骨が再生する仕組みです。

 また、グンゼ(3002)は、鈴鹿医療科学大学筏教授と研究を推進しており、骨接合剤、人工硬膜などの実用化にメドをつけています。また、人工皮膚、人工血管のほか、生体内で溶ける高分子を開発、あごの骨を再生させるための型を作ることに成功しています。あごの骨を切除した患者に骨を再生させるための細胞を埋め込む治療で活用が開始されています。

 また、骨、皮膚などを増殖させるための「増殖因子」では、科研製薬(4521)が注目されます。同社は、繊維芽細胞増殖因子(bFGF)を使った世界初の医薬品となる難治性皮膚潰瘍治療剤「フィブラスト」を申請中で、今夏にも認可の見込みです。同薬剤は、米サイオス社より導入したもので、ピーク時年商50〜70億円が見込まれています。

 三洋化成工業(4471)は、米バイオベンチャーのプロテイン・ポリマー・テクノロジー社の動物細胞関連製品事業を買収、バイオ事業に本格参入しました。さらに、皮膚治療剤事業にも進む計画で、2010年に既存の酵素系診断薬と合わせ、バイオメディカル事業を100億円規模にまで拡大する計画です。

 皮膚、骨などの次の段階としては、臓器への応用がターゲットとなっています。ここで、注目を集めているのが、万能細胞とも称されるES細胞(胚性幹細胞)です。通常、人間の体はただ一つの受精卵が細胞分裂を繰り返し、それぞれの細胞が心臓や神経、筋肉などに分化するよう定められています。しかし、ES細胞は未分化のまま、いつまでも分裂を繰り返し、環境に応じてどのような細胞にも変わり得る特異な特徴を持っています。何らかの分化誘導物質を加えることにより、分化を開始することから、特定の臓器を作り出すことも可能とされ、実用化への期待は高まっています。

 このES細胞が発見されたのは1981年、英ケンブリッジ大学の遺伝学部門のマーチン・エバンスと解剖学部門のマシュウ・カウフマンの共同研究からです。マウスの受精卵から発見され、その成果は世界で最も権威ある科学雑誌「ネイチャー」に掲載されました。また、98年11月には米ウィスコンシン大学のジェームス・トムソンが率いる研究チームがヒトのES細胞の培養に成功しています。この研究は、ヒトのES細胞を公然と研究している唯一の企業であるバイオ・ベンチャー、ジェロン社(カリフォルニア州)が支援しており、パーキンソン病や心筋梗塞の治療に使う拒絶反応のない移植用細胞の製品化を目指しています。

 国内では、協和発酵(4151)が京都大学再生医科学研究所の笹井教授と共同でマウスのES細胞から脳の神経細胞を効率よく培養する技術を確立しています。培養された神経細胞は、神経伝達物質ドーパミンをうまく作り出したことから、やはりパーキンソン病の治療薬につながる技術として期待されています。

 また、田辺製薬(4508)も、京大、滋賀医科大、近畿大との共同研究で、カニクイザルの受精卵からES細胞を作り出すことに成功し、学術用に無料で提供を開始しました。提供を受けた大学や研究機関が、サルのES細胞から特定の臓器や組織の細胞を作る技術を開発した場合、特許を共同申請し、ビジネスにつなげる意向です。

 藤沢薬品工業(4511)は、グループの米投資会社フジサワ・インベストメンツ・アントレナーシップ(イリノイ州)が、米バイオベンチャー、アーティセル(ノースカロナイナ州)に資本参加しました。アーティセル社は、ヒトの細胞組織に存在するストローマという万能細胞について研究を推進しており、藤沢薬品は今後、同社から最先端の技術情報を取得、自社の創薬研究に活用する意向です。藤沢薬品の動向が注目されるのは、自社開発の免疫抑制剤「プログラフ」が前2000.3期の売上高418億円と連結売上高の14%を占めるまでに成長していることです。臓器の培養が本当に実用化されれば、免疫抑制剤は不要になります。この市場を維持するうえでも、再生医療の技術の導入は必須となります。

 また、キリンビール(2503)も細胞医療分野の事業構築に向け、ヒト抗体産生マウス事業で米メダレックス社(ニュージャージー州)と包括提携したほか、血液中の「樹状細胞」という免疫機能を高める細胞を分離する技術を米デンドレオン社より導入しています。

 旭化成工業(3407)も昨年12月、バイオ人工肝臓開発のサーシーバイオメディカル社(マサチューセッツ州)に資本参加しています。

 こうした研究開発は、いまだ「事業化」と呼べる域にまでは達していませんが、今後急展開する可能性も十分です。関連企業群については、是非注視していただきたいと思います。

 また、歯科材料、人工毛髪なども「広い意味」では、「再生医療」の範疇に属します。移植された毛根から髪が生えたという実例も報告されています。

 再生医療の発展により、私並びにぢんぢ部長の前途は洋々たるものといえましょう。(駄洒落商会会長)

 


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