No.
日付
タイトル
執筆者
7
2003/03/07
大盛工業(1844)☆ 売上認識を都合よく変更し利益を水増し
大原部長
6
2003/03/07
為替相場動向
生涯遊人
5
2003/03/07
堅調な低温物流市場
小野小町
4
2003/03/04
中間決算をしっかりと見れば保有することは絶対になかったタスコシステムズ(2709)
大原部長
3
2003/03/03
ナノテク花盛り
炎のファンドマネージャー
2
2003/03/03
増大する大学発ベンチャー企業
炎のファンドマネージャー
1
2003/03/03
2月の株式相場を振り返って
炎のファンドマネージャー

前月のコラムへ

7
2003/03/07 大盛工業(1844)☆ 売上認識を都合よく変更し利益を水増し
大原部長

 

 =本日のキーワード 監査報告書=

【特集 粉飾決算その1 売上高とはなにか】

 わたしたちが株を売買するとき、ファンダメンタルズ分析の場合は、バリエーションというモノサシで売買する。
企業業績から一株あたりの予想純利益(予想EPS)を論じ、そして、そのEPSの信用性を論じ、成長性を論じる。
株価と予想EPSとを並べて、比較し、株価がEPSの何倍であるから、この会社は、買いだとか売りだとか、安いとか高いとか判断するのだ。(最近は、株式市場が人気がなく、株価とEPSの倍率であるPERが全体的に低くなっている)

 しかし、わたしたちは、PERやEPSを論じる前に、もっと正確に業績を論じるべきだろう。
やるべきことをやってからEPSを論じるべきなのだ。

たとえば、収益の柱は、売上高である。

 売上とはなにか?
読者の中で、売上とはなにか正確に知っている人は、ほとんどいないであろう。
それぐらい、売上の定義はあいまいなのだ。
売上とは非常にやっかいなものなのだ。

 売上の認識の度合いが企業によって違っている。
ある企業は、きっちりと入金があるまで、売上を計上しない。
ある企業は、顧客にお金を貸してまで売上を早期に計上する。
ある企業は、顧客が買う前に売上を計上する。
また、ある企業は、売れる可能性がほとんどないのに、売上を計上している。
そして、ある企業は、まだ何年も先になりそうな案件を、ずっと前倒して売上として計上している。

 それらの企業の売上の違いを認識することをしないで、単純に、横に企業の売上を並べている。
それが証券会社のアナリストなのである。
証券会社のアナリストは別に投資家のことを考えているわけではないから、ズボラで構わない。
しかし、お金を預かっている運用のプロである機関投資家には、さすがにそのようなズボラなアナリストはいない(と願っている)。

 ということで、わたしたち、機関投資家は、売上の計上の仕方をしっかりと認識して、企業の損益を見かけ上のものから調整している。
企業の損益は、見かけ上のものとは全く違っている。
本当の実力は、売上の認識の違いを調整することが出発点になるのだ。

「そんな面倒なこと普通やってないよ」。
そうみなさんは、おっしゃります。(小声で)
 ♪だから投資に失敗するんですよ♪

 苦労して実態を見極める調査は結構大変!!
 だから、わたしたちのようなプロの証券アナリストが存在しているのだ。

【インテルと日立の売上計上の違い】

 インテルは、ディストリビュータ向け売上については保守的な会計処理をしている。
ディストリビュータへ製品を出荷する。
しかし、売上計上はしない。
ディストリビュータから連絡を受け、製品が本当に顧客に販売されたことを確認してから、売上総利益を認識している。
製品が出荷した時点では売上総利益は認識されない。
根底にあるコンセプトは、回収可能性において不確定要素がある場合は、収益の認識は繰り延べられるべきという考えである。

 日立製作所。
かれらの有価証券報告書の注記には以下の記述がある。

『当会社の製品は多種にわたっており、収益及び関連する費用は主に製品の出荷時や着荷時または役務の提供時に認識している。また、特定の長期請負契約については、工事進行基準を適用している』

 わかりにくいので、「翻訳」する。

「日立は、いろいろなことをやっているので、インテルのように手間隙かけて顧客に売れたかどうかを確認することはしない。たまには出荷時に売上を計上し、たまには着荷時に売上を計上する会計操作の余地を残している。そして、極めつけの手段は、工事進行基準だ。全然、売上が立つ見込みがないものでも、売上を計上できる方法をとることもある。数年先に完成するような案件も必要なら今すぐに売上に計上している。とにかく何でもあり。自由な会計、自由な我らだ」

 ちょっと、意訳がすぎたか。

 ここで、工事進行基準という難しい言葉がでてきた。
要は、受注した案件の完成や引渡しが期中に間に合わないのに、ちゃっかりと売上に計上して、利益を水増しする手段となりうる。
もちろん、合法的な会計トリックだ。

【粉飾事件簿 大盛工業の会計変更】

 大盛工業という会社がある。
前々期の監査報告書にはこのような記述があった。

『連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項4.(6)に記載のとおり、連結財務諸表提出会社の工事進行基準については、従来、「工期1年以上、請負金額3億円以上、かつ期末工事出来高40%超」の長期大型工事に適用していたが、当連結会計年度より「工期1年以上、かつ請負金額1億円以上」の長期請負工事に適用することに変更した。この変更は、最近の受注工事の小型化と中途解約率の低下に対応して、工事収益を合理的に計上することにより期間損益の適正化を図るために行ったものであり、正当な理由による変更と認める。この変更により、従来と同一の基準によった場合に比べ、完成工事高は1,087,217千円増加し、完成工事総利益は58,405千円増加し、営業損失、経常損失及び税金等調整前当期純損失はそれぞれ58,405千円減少している。』

 つまり、いままでは小型の案件は受け渡しのときになって初めて売上として計上していた。
でも、倒産しそう。
だからこれからは、利益を水増しするためには、なんでもかんでも完成前に計上しちゃいます。
そういうことなのだ。

 いまの日本は、不景気にあって、こういう売上認識の変更があちこちで行われている。

【野村総研とNTTデータ】

 野村総研は進行基準をとり、アグレッシブな会計処理をしている。
NTTデータは契約ベースでの売上認識をしている。
両者の売上を同一に並べることはできない。
だから、両者のPERは違っていて、市場ではNTTデータの利益を「進行基準並み」に評価していることがわかっている。

【監査報告書を読もう】

 粉飾決算に対して、もっともリスクを負うのは監査法人である。
今年から監査法人は気合が入っている。
エンロンなどの問題を契機に、まじめに監査をしろという当たり前の要求がきつくなっている。
ことしは銀行に対して、繰延資産の計上を厳しく査定する方向のようだ。

その監査法人が監査報告書というものを出している。

 投資家がまず最初に見なければならない書類は何だろうか?
これはなかなか面白い問いかけだ。
実は、有価証券報告書やバランスシートや損益計算書ではない。
真っ先に見るのは監査報告書。
これが一番重要な書類だ。

 これに「特記事項」が付されている企業がある。

⇒ 監査報告書に、特記事項がある。こういう企業には手を出してはならない。

 先ほど、売上を水増しした大盛工業の前期の監査報告書には、以下の記述がある。

 〜監査報告書より 7月決算より〜

『当監査法人は、証券取引法第193条の2の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社大盛工業の平成13年8月1日から平成14年7月31日までの第36期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、損失処理計算書及び附属明細表について監査を行った。〜中略〜
特記事項
 追加情報に、会社は前事業年度に引続き2期連続の債務超過の状況にあり、債務超過の解消と信頼回復を図るために、「経営中期計画」に基づいて不採算事業を整理し事業の再構築に取組んでいる途上にあるが、同計画の基本方針の達成にはいずれも諸困難と不確実性が伴うことも事実であり、その達成如何によっては今後の当社の事業の継続性に重要な影響を与える可能性がある旨の記載がある。』

 つまり、事業の継続性に困難を伴う、倒産の危険が高いということを、監査法人は宣言しているのだ。
「大盛り」工業なので、意訳を大盛りに行うとこういうことだ。

『当監査法人は、監査を行った結果、この大盛工業の再生が難しいと思っている。倒産してしまうだろうと思っている。でも、難しい言葉でさらりといわないと、大盛工業に失礼なので、わかりにくく伝えたいのだ。でも、この会社は怪しい。みんな!気をつけるんだ!」

 それが特記事項である。

 監査報告書を読もう。
 それが破滅を防ぎ、みなさんの財産を守ることになる。

 そういえば、この3月になって、大盛工業の公認会計士が変わった。
 なかなか興味深い事件である。

【アドバンテスト(6857) 保守的な売上計上基準への変更】

 売上の認識を変更した会社がある。
こちらは、より保守的な会計への変更。
動きとしては望ましい動きである。
いままでは押し込み販売で収益を水増しする恐れがあった。

アドバンテスト(6857)である。
彼らの有価証券報告書の注記事項にはこうある。

「当社は従来、製品の設置を伴うものの売上計上基準として設置完了基準を採用しておりましたが、国際的な収益認識基準の動向を踏まえ、海外の販売子会社についても、従来の出荷基準から設置完了基準へ変更し、連結ベースでの売上計上基準の統一を図りました。ただし、この変更により連結財務諸表に与える影響額は軽微であります。」

 翻訳する。

「米国に上場するために、いままでは出荷時に売上計上していたことを指摘されたので、改める。今後は、しっかりと設置が終わってから、売上を計上することになり、粉飾の余地が少なくなった。それによる利益への影響はきわめて大きいのですが、そうは書けないので、影響はないと言っておきます。」

【出荷してしまえば、海の上の製品さえ、売上として認識できる 洋上の売上】

 出荷基準をとる企業には注意が必要だ。
船便で海の上に在庫をどんどん積んで、出航。
企業側では、ちゃっかり売上に計上し、利益を水増しする。
そういうことに気をつけたい。
決算時に大きく売上が伸びて、利益が急増。
在庫が急減。
これはすごいと思っていたら、実は、製品がまだプカプカと洋上に浮かんでいる。
そういうことが前にありました。

だから売上計上の認識を確認することは非常に重要なアナリストの「いろは」である。

 パイオニアやソニーの計上基準は着荷時だ。
だから洋上の製品が売上になるということはない。
安心していいのだ。
(大原)

 

このページのトップへ

6
2003/03/07 為替相場動向
生涯遊人

 

 BOE(バンク・オブ・イングランド)に続き、昨日欧州中銀も、政策金利である市場介入金利を0.25%引き下げて、年2.5%にした。金利水準はユーロ発足以来最低水準となった。
 市場の予想では0.5%の利下げもあるのではないかとしていたため、発表直後は、失望でユーロ売り、独国債売りとなったが、追加利下げを期待した買戻しがすぐに入った。債券、通貨ともに買い戻されたが、DAX指数は、10.5%と1998年4月以来の失業率の悪化を受けて−60.51と売られた。

 ドイセンベルグ欧州中銀総裁は「イラク情勢などの不透明な要因を金融政策に過度に織り込むことはできない」と0.25%の利下げの理由を説明したが、「適切な時期に行動する用意がある」と追加利下げに含みをもたせるコメントも述べた。
以下はドイセンベルグ総裁の記者会見での要点。
・ユーロ圏の2003年の成長はVery Modestなものになる
・今の時点で金利水準が適当の表現は入れない
・地政学上の緊張が、見通しを不透明にしている
・ユーロ高はファンダメンタルズが好転していることを示唆するもので、競争力を削いではいない
・今年度の域内成長率は1%と見込んでいる
・今回の利下げは、戦争とは何ら関係がない

 またスイス国立銀行は重要な政策金利である、3ヶ月物市場金利の目標を0.5%引き下げ0.25%としたため、限りなくゼロ金利に近づいた。
 最近、イラク情勢の緊迫をうけて危機回避的なスイスフラン買いが進み、急激なスイスフラン高をおさえる意味もある利下げだろうが、それを受けて対ユーロではスイスフラン売りがでたが、対$では以前スイスフラン高が続いている。

 以上のように日本のゼロ金利は別として、世界中で金利下げの傾向が顕著だ。このことは戦争の控えての市場の停滞(金融市場という意味だけではなく、人々が消費に対して控えめになっているという意味も含めて)に対する予防的な処置ともいえる。
 しかし経済の停滞は、所謂地政学的な理由だけではなく、要するに2000年のネットバブルの処理をまだ終えていないことが、欧米の経済の停滞の原因ではないだろうか…。残念ながら我が日本は、1990年以前のバブルの処理すら終えていないのだが。

 戦争という公共事業が(ここであえてこの戦いの善悪は述べません、しかし戦争が財政出動を施し、国防産業を中心に景気を刺激することは否定できません)凶とでるか吉とでるか、まだ予断が許せません。
(生涯)

 

このページのトップへ

5
2003/03/07 堅調な低温物流市場
小野小町

 

 国内の物流市場全体が頭打ちの中、冷凍・冷蔵食品を輸送する低温物流市場は堅調です。日本冷蔵倉庫協会の調べによれば、2001年までの10年間で入庫高は1.3倍に拡大。中でも冷凍食品は年々増加傾向にあります。

 背景には女性の社会進出や高齢化による調理済み食品の需要増があります。冷凍食品協会の調べによれば日本の冷凍食品の消費量は2001年までの10年間で1.5倍に拡大。海外からの輸入も増え、中でも中国からの輸入量は2001年までの5年間で2.5倍となりました。
 またチルド(冷蔵)食品も常温食品に比べ、味が良く添加物の使用を抑えられることもありスーパーやデパ地下での利用が増えています。また食の安全を意識してか、常温輸送だったものを低温輸送に切り替える動きも出てきました。

 低温物流と一口にいっても魚・肉類、乳製品、加工食品と商品別に管理温度帯は異なり、それぞれきめ細かいサービスが要求されます。中でも鮮度が重視される生鮮食品は受注から納品までのリードタイム短縮を要求されるため、24時間365日体制でのサービスを行う企業も少なくありません。また特殊な設備が必要とされるので元々食品メーカーの物流子会社が強く、利益率も常温物流より高いのが特徴です。

 高度成長期には単品大量物流に対応した保管型事業が中心でしたが、コンビニや外食チェーンの台頭と共に近年は多頻度小口物流が主流となりました。また物流合理化の流れの中、複数メーカーが拠点を共有し一度に配送する一括物流の需要が高まっています。

 低温物流首位のニチレイ(2871)は量販店等の配送センターの受託運営を行う流通型事業を強化。中でもイオン(8267)との取り組みには積極的で、昨年11月には静岡県に開業した大型物流センターの運営を受託しました。既存の保管型事業が伸び悩む中、流通型事業は今中間期も前年同期比17%増と好調でした。
 キユーピー(2809)の物流子会社だったキユーソー流通システム(9369)も2000年にメーカーや物流業者向けに全国小口輸配送システム「キユーソースルー便」を開発。会員企業はインターネット上で貨物と空車を組み合わせ積載効率の向上を図れます。貨物と車の組み合わせ率は98%と高く、2002.11期の売上高は前期比倍の40億円となりました。

 また冷凍食品配送車の普及もあり、複数の温度帯の商品を一度に配送するケースも増加しています。昨年10月にはニチレイと名糖運輸(9047)が食品物流での資本・業務提携を発表。冷凍輸送に強みを持つニチレイと冷蔵物流に強みを持つ名糖運輸は互いのノウハウを生かした営業を展開する方針です。

 卸企業や商社など異業種が低温物流事業を強化する動きも見られます。三菱商事(8058)の子会社で食品卸大手の菱食(7451)は今10月に低温食品卸事業をニチレイ子会社のユキワと統合し新会社を設立、これにより新会社の低温食品の取扱高は国内トップとなる見通しです。昨年7月には横浜市に新型の物流センターを開業。徹底した温度管理システムを導入し、入庫から店舗までの温度管理履歴をメーカーや小売店に提示することが可能です。
 伊藤忠商事(8001)も2001年10月に住友商事(8053)等と生鮮食品の物流事業で提携し、共同出資で物流の情報サービス会社イーサポートリンクを設立。産地から店舗まで商品管理データを詳細に保存できるシステムの販売を行っています。多くの食品企業がトレーサビリティ(生産履歴の追跡)に努める中、こうした取り組みは注目を集めそうです。

 今後も需要は拡大しそうですが、顧客の要求するサービス水準は年々高まっています。それには情報システムの構築や輸配送の品質向上と共に、他社との提携やM&Aなど自社の枠にとらわれない柔軟な経営戦略が求められるでしょう。
(小町)

 

このページのトップへ

4
2003/03/04 中間決算をしっかりと見れば保有することは絶対になかったタスコシステムズ(2709)
大原部長

 

 ●タスコシステムズ(2709) ☆

=中間決算をしっかりと見れば保有することは絶対になかった=

 タスコシステムズ(2709)が決算発表の遅延がきっかけで暴落した。

 2月28日に発表予定のタスコの決算が延期された。
引継ぎが社内で上手くいかなかったためだという。

 株価は2月25日に16万円。
その後、3月3日前場現在で9.6万円台と4営業日で40%も下落した。

 ファンダメンタルズ分析を行っていれば、保有するようなことは絶対になかったと言い切れるタスコシステムズ。
ファンダメンタルズ分析の基本が出来ているアナリストなら株価評価は、6ヶ月前の8月の時点で「売り」となったはずである。

 悪い徴候は8月23日にリリースされた決算短信ですでに6ヶ月前に出ていた。
中間期はタスコは一見「好決算」を演出している。http://www.tascosystem.co.jp/ir/pdf/2002ifr1.pdf

 売上は前年比35%増の104億円、営業利益は前年比63%増の7.4億円へ大躍進。
株価は40万円だった。

 しかし、決算発表で株価は大きく調整。
株価は10月初旬まで一貫して下げ、22万円まで大きく調整。個人投資家であれば、悪くとも決算後の数日間で、30万円台で売り逃げることが可能だった。

 株価は10月に一旦反発。
下旬には27万円まで戻し。
その後、11月には20万まで下げ、12月に23万円に反発。
2003年に入り、ストンと落ち、15−16万円で安定推移していた。
そして、この遅延事件で暴落した。

 8月発表の中間決算を一読すれば、異常はすぐに検出できる。
中間決算で売掛金が急増している。
前期の1.3億円が中間期で22億円に信じられない増加だ。
売掛金がなんと20倍近くまで膨らんだのだ。
掛け金を増やして売上を増やすのは、売上の質を著しく落す。
そこで、押し込み販売など、異常な収益の認識がなかったかどうかをチェックすることになる。
異常な売上債権の膨張をチェックすることは、証券アナリストの「いろは」であり、基本動作のひとつだ。

 そして、棚卸がゼロから前期の0.1億円から1.4億円に膨張している。
利益は過大に計上されている可能性がある。
無形固定資産が急増している。
連結対象会社に大きな変化がないのに、どうしてだろうか。(ただし、未払い金が急に14億円増えるなど、積極的な費用落としも見られる)。

 中間決算を一読すれば、ビジネスモデルが変質していることは明らかだ。

 タスコのように財務内容が悪いのに積極的に出店を続ける企業の末路はこの通りになる。
ファンダメンタルズを知っている人であれば、このような銘柄に手を出さなかっただろう。

 結局、財産を守るのはご自身の知識。

 とはいえ、先日、ご紹介したセラーテム事件や今回のタスコ事件のように、投資家にファンダメンタルズ分析をする時間と力量が足りない場合は、大きな損害を被ることになる。

 このように、証券アナリストの社会的責務は大きいのだ。
証券アナリストがプロとして、このように問題の多い企業の「会計トリック」を指摘することが求められているのだろう。

【粉飾バスターズの結成】

 ライコス掲示板では、居酒屋「億近」で、2003年2月20日に粉飾バスターズを結成。
セラーテム事件のような事件を証券市場で二度と起こしてならないという決意の下で、わたしを中心に会計に明るい居酒屋常連さんの力を借りて決算トリック、会計トリックを用いる会社を指摘している。

 なんと、このタスコシステムズも、2月22日にバスターズの一員、C言語さんがしっかりと指摘した!
ライコスの掲示板を覗いていた方は、タスコ事件を事前に防ぐことが可能だった。
粉飾バスターズの成果が活動開始後すぐに出たことに胸をなでおろしている。
粉飾バスターズがおかしいと指摘した企業は20近くに上っている。
年初来安値を繰り返す銘柄も多数含まれている。

【粉飾とは】

 合法的、非合法的を問わず、投資家の投資判断に誤解を与えかねない会計トリックを用いること。
今後、わたしたち、粉飾バスターズは、多くの企業を「粉飾」と批判させていただきます。
たとえ合法的な会計処理を行っていても、投資家に誤解を与えかねない会計処理に対しては、毅然とした態度をとらさせていただきます。

【粉飾撲滅宣言】

 証券アナリストの社会的地位は低い。
低くて当たり前。
なぜなら、投資家の立場にあり、投資家の利益を守るべきアナリストたちが、会社側の粉飾決算に加担している。

 粉飾には、まず、費用を資産計上し、費用を少なく見せる粉飾がある。
また、本来あるべき負債をわざと認識しないで、減額すべき利益を減額しない粉飾とがある。
その他、いろいろな合法的な粉飾があるが、松下の場合は、認識できる負債を認識しないで利益を減額していない粉飾が公然と行なわれている。

 わたしの見る限り、投資家を守るべきアナリストは、そのような粉飾を指摘するどころか、粉飾の存在すら確認しようとしないものばかりだ。

 アナリストは証券分析の「いろは」が弱い。
会計知識を知っていても、それをどう生かすかがわかっていない輩が多いので、わたしには嘆かわしい。

 アナリストは、投資家の代弁者として、企業に対峙する必要がある。
粉飾がいたるところで行なわれている。
わたしの見るところ、3社に1社は、粉飾に手を染めている。
これは大変な数なのだ。
しかも、年々、粉飾の方法が大胆になってきている。
これはどうしたことだろう。

 証券アナリストたちは、もし、良心があるのなら、しっかりと粉飾決算を見抜くべきだ。
必要であれば、企業と対峙し、認識すべき負債を計上させ、費用化すべき資産を早期に費用化すべきだ。
それは、企業に対して必ずしも強要する必要があるのではなく、アナリスト自らの会計トリックのない予想バランスシートとPLをつくるべきだ。
しっかりと粉飾のない、バランスシートに自らが訂正を入れるべきだろう。
自らが発行するそのレポートに会計トリックを除外して、本来の企業の実力だけを反映させるべきだ。

 わたしも含めて、投資家を擁護すべきプロフェッショナルが粉飾を糾弾しなければ、粉飾はなくならないだろう。
粉飾企業から投資家を守るために、問題企業のバランスシートとPLは大幅に調整を入れなければならない。

 果たして、そのような調整が入れられるアナリストは、日本に、何人いるのだろうか。

 勇気ある、アナリストたちよ、立ち上がってほしい。

来週から、個別企業の粉飾事例を追いかけたいと思います。
(大原)

 

このページのトップへ

3
2003/03/03 ナノテク花盛り
炎のファンドマネージャー

 

 「桜の花が開花するにはまだ多少は早いが、春まだ早いここ幕張ではナノテクの花が一斉に咲き誇り、賑やかな宴のような華やかさが感じられた。」

 私が親しくしている知財に詳しい方が、2月26日〜28日に開催された国際ナノテクノロジ−総合展「NANO TECH 2003」を見学に行ったそうで、些か興奮気味にその時の印象を話していた。
 ナノテクについてはかつてNECの飯島先生のお話をお聞きすることができたことを私のWEB上でも報告しているが、その後、各方面で関心が高まり、今や国を挙げての研究開発、製品化、事業化が図られようとしている。

 本日の日経産業新聞でも伝えらえていたが、今回の入場者数は昨年の2.5倍に膨らみ、米国、ドイツ、韓国など海外からの出展も含め昨年の2.2倍にあたる202の企業、大学等の研究機関が出展。多くの来場者で賑わっていたと私の知人も話していたが、彼の印象に残ったテーマとしては、
1)蛋白質の構造解析(三井物産がソフトに絡んでいた)
2)ナノマニュピレーション
3)マイクロナノファブリケーション技術など。

 また、多くの大学や産総研などの研究機関が基礎的な研究成果を持ち寄り、今後の具体的マーケットに結びつける役割を担って活動。素材としての技術を今後どのように開花させるかがナノテク関連ビジネスの将来を占っている。
 取り敢えずは計測機器などの基礎的な分野が先行しているが、NEC、日立などの大手電機メーカーのほか、三菱商事、三井物産、住友商事などの商社が積極的に取組んでいる姿が目についたそうだ。

 今後の投資の参考にして頂くために、以下に主な出展企業(上場企業)とその関連分野を紹介しておくことにする。

●オリンパス
 超精密測定機器、評価、計測ツール

●極東貿易
 カーボンナノチューブ:中国シンセンナノテクボード社の低価格カーボンナ ノチューブを販売

●グラフテック
 超精密測定機器:表面形状の測定機器

●神戸製鋼所
 薄膜製造技術、超精密測定機器、超精密表面加工技術、電子顕微:DLC薄 膜、高配向ダイヤモンド薄膜、超電導マグネット技術など

●GSIクレおス
 カーボンナノチューブ:独特なカップ積層構造を持つカーボンナノファイバー(カルベール)

●シスメックス
 超精密測定機器:英国マルバーン社製の粒子計測装置

●島津
 SPM・AFM、超精密測定機器、評価・計測設計ツール:試料表面を微小な短針で走査することで三次元形状を高倍率で観察する走査型プローブ顕微鏡(SPM)

●住友商事
 カーボンナノチューブ:単層型カーボンナノチューブ開発のベンチャーCNI社(フラーレンを発見し96年にノーベル賞受賞したリチャード博士らが創設)と提携

●住友精密
 マイクロマシン、エッチング:MEMSの製作工程に不可欠な装置

●住友電工
 複合材料、マイクロマシン:量産マイクロマシン技術であるLIGAプロセスで製作した製品

●住友ベークライト
 複合材料、ナノコンポジット材料:ナノテク利用の半導体関連材料

●東陽テクニカ
 超精密表面加工技術、SPM・AFM、超精密測定機器:ナノテク研究開発に活用できる分析機器

●東レ
 カーボンナノチューブ、DNAチップ、マイクロTAS:名古屋大学篠原教授とカーボンナノチューブを共同開発中

●巴工業
 カーボンナノチューブ、SPM・AFM:ナノデバイス社製カーボンナノチューブ炉

●長瀬産業
 カーボンナノチューブ、フォトニクス材料、光デバイス、DNAチップ、ヘルスケアチップ、薄膜製造技術、微小放電加工:ナノ微細加工技術とナノ材料

●ニコン
 マイクロマシン:3次元加速度センサ、マイクログリッパ 1986年から「吉田ナノ機構プロジェクト」とジョイントでSTMの特殊なプローブを開発

●日商岩井
 マイクロマシン、微小放電加工

●NEC
 フラーレン、カーボンナノチューブ、次世代ディスプレイ、ドラッグデザイン:10年以上前から開発に取り組む ナノ加工とナノデバイス、CNT燃料電池

●日本電子
 薄膜製造技術、レーザーイオンビーム加工、電子ビーム加工、SPM・AFM、評価・計測設計ツール、電子顕微

●日本ミクロコーティング
 複合材料、超精密表面加工技術:次世代研磨の新提案 複合微粒子研磨システム等を紹介

●伯東
 光デバイス、超精密表面加工技術、評価・計測設計ツール、電子ビーム加工:オーシャンオプティックス社製超小型スペクトロメータ等

●日立製作所
 フォトニクス材料、ナノコンポジット材料、光デバイス、次世代LSI、データストレージ、ドラッグデザイン、ヘルスケアチップ、マイクロTAS、薄膜製造技術、レーザー・イオンビーム加工、電子ビーム加工、SPM・AFM、評価・計測設計ツール、電子顕微:ナノテク統括センターで約300名の研究者が革新的な物性・機能性の創造を目指した新技術の研究開発に従事

●日立ハイテクノロジーズ DNAチップ、電子ビーム加工、評価・計測設計ツール、電子顕微

●フォトニクス
 SPM・AFM:業界初の掌サイズのモバイルAFMを展示

●フォトロン
 マイクロマシン:バイオ、ナノテクの各種作業を支援する革新的ツール リアルタイム全焦点顕微鏡カメラ

●双葉電子
 カーボンナノチューブ、フォトニクス材料、ナノコンポジット材料、次世代 ディスプレイ、DNAチップ:CNTを使ったフラットパネルディスプレイ等

●ホソカワミクロン
 フォトニクス材料、複合材料、ナノコーティング、ナノコンポジット材料、DDS、光触媒、薄膜製造技術:ナノマテリアル事業部で取り組む

●堀場製作所
 超精密測定機器、評価・計測設計ツール:最新のエアロゾル粒子計測システムを紹介、ラマン分光分析システムなど

●三井物産
 フラーレン、カーボンナノチューブ、光デバイス、マイクロマシン、マイクロTAS、薄膜製造装置:年産120トンのカーボンナノチューブ量産プラントが稼働、用途開発も

●三菱商事
 フラーレン、カーボンナノチューブ、次世代ディスプレイ、ドラッグデザイン:本荘ケミカルが2002年7月より世界最先端の二層ナノチューブの製造を開始、フロンティアカーボン株式会社では2002年5月から年間400キログラムのパイロットプラントを稼働。従来より安価な価格(500円/g)でフラーレンの販売を開始。2003年4月には年間40トンの設備を稼働すべく新工場を建設。

●モリテックス
 複合材料、光デバイス、マイクロマシン、エッチング、SPM・AFM:微細加工部品、小型分光器システム、ナノ粒子、近接場ファイバープローブなど

●レーザーテック
 超精密測定機器:ブルーレーザー顕微鏡
(炎)

 

このページのトップへ

2
2003/03/03 増大する大学発ベンチャー企業
炎のファンドマネージャー

 

 21世紀における日本の経済を担う新規産業創出プロセスとして、大学や研究機関の優良な技術シーズによる産学官連携型ビジネスに大きな期待が集まっており、政府や各自治体においても長期的な戦略にもとづいた施策を打ち出しはじめている。昨年後半にはアンジェスエムジー株式会社および株式会社トランスジェニックという2社の大学発ベンチャーが株式公開するに至り、その気運は益々高まっていることは皆さんもご存じの通りかと思います。

 私も先日ご紹介した通り、大阪大学発のベンチャー企業でありますLASERエコバイオのスタートアップについて協力している最中ですが、恐らく各地でこうした事例が増えているものと拝察致します。

 ところで、皆さんはこうした大学発ベンチャー企業の数がどの程度になっているかご存じですか?
 統計としては筑波大等の調査(全国の大学等に対するアンケート調査)があるとのことで、文科省産学連携手法の構築に係るモデル事業で、昨年10月に速報ということでレポートがまとめられているそうです。それによると大学等発ベンチャー(*)は424社(前年度251社)、政府系研究施設発ベンチャー32社(うち3社は大学等発ベンチャーと重複)(前年度24社(うち1社は重複))(※大学等:大学・高等専門学校)となっています。
 前年度と比べると173社も増えていることからも、こうした勢いを感じることができますね。

 アンジェスエムジーやトランスジェニックは、希少性から期待値が異常に膨らんでの株価形成がなされているようにも思えますが、今後も第2のアンジェスやトランスジェニックを目指して、多くのベンチャー企業が登場してくるに違いないでしょう。この場合、大学の先生が果たすべく基礎研究の追求がおろそかにならないように気をつけないとならないことは言うまでもないでしょう。

 企業の利益追求の姿勢と、大学の先生が果たすべき役割分担がうまく交通整理されることが、こうした大学発ベンチャー企業の発展のポイントになるでしょう。
 将来の市場規模が過大視されて投資家の期待が過剰にならないように、こうした大学発ベンチャー企業への証券アナリストの評価は厳正なものとなる必要がありそうです。

 但し、企業の将来など誰にも判らないものです。増してやより高度な技術力をバックグラウンドとなっているベンチャ−企業の技術評価などは、極く限られた人にしか判らないものです。

 先日、私たちは有志とともにグローバルパテントマネジメント社という知的財産の評価や知財の事業化を支援する企業を設立しましたが、少しでもこうした大学発ベンチャーの役割や企業価値をチェックできる体制を整えられればと願っております。

 今後の大学発ベンチャー企業に求められている先進的な技術開発力、一般企業との事業アライアンス力が、閉塞的な日本経済の回復に少しでも役立つことを願って止みません。
(炎)

 

このページのトップへ

1
2003/03/03 2月の株式相場を振り返って
炎のファンドマネージャー

 

 1月末に8300円台で終えた後の2月の日経平均は、月の前半こそ予想外に堅調な展開となったが、後半にかけては再び調整色を強め、結局は月初の水準に逆戻り。イラク攻撃を控えた米国市場の動向を睨みながらの調整相場を余儀なくされた。
 米国株式相場の調整から、優良銘柄や銀行株などの主力銘柄は低迷したが、中低位銘柄を中心に個別にはしっかりする銘柄もあって、銘柄の選択次第ではソコソコの運用成果が上がったものと推察される。

 セクター別には電機・精密などの主力銘柄が弱い一方で、海運や倉庫など比較的中低位銘柄が多いセクターが堅調に推移した 結果としてはこれまでの相場レンジの下限付近まで値を下げてきた格好であるが、一般的に想定されていた日経平均の8000円割れは回避され、2月相場での底割れには至らなかった。
 市場の先行きはなおも不透明であるが、2月相場で意外に下値が堅かった背景としては、国債の利回りが0.8%割れとなっている一方で、株式の配当予想利回りが1部市場で1.43%、2部市場で2.09%、JASDAQ市場で2.15%となっていることが考えられる。
 一番頼りになる(?)筈の国が発行する債券の利回りが、いくら何でも0.8%以下では妙味がない。多少でもキャピタルゲインが期待できる水準にまで下落している株式市場に資金が徐々に流入してきていると考えると、自ずと株式相場の下値も限定的になってくることになる。銘柄によっては配当利回りの尺度が通用しない銘柄もあるため、下値が見え難い場合もあるが、全体的にはなおも下値不安が残り、目先的なキャピタルロスを生じることがあっても、配当利回りが下値を支えてくれることになる。

 企業リストラの実施から、日経225のPERは今期予想ベースでなおも平均43倍となっているが、2部市場では16倍、JASDAQでは17倍とかなり水準が低い状況になっている。銘柄によっては5倍から8倍程度の銘柄が数多く見られるようになっている点も素直に評価して良いだろう。また、PBR水準も1部市場全体では1.23倍、2部市場では0.69倍、JASDAQでは1.05倍となっていることも相場の下支えとなっていると考えられる。

 米国市場の動向が不透明なことが日本の株式相場を下振れさせる要因となっているが、こうした株式本来の投資価値を勘案すれば、余り米国市場の動向に過敏に反応するべきではないだろう。その米国市場もハイテク銘柄が多く含まれるNASDAQでは、2月が+1.3%と結果としては一番成果を上げていたことに注目しないとならない。週末にはインテル中心に買いが集まっていたことから、日本のハイテク銘柄にも多少は好影響を与えよう。

【各インデックスの動向】

日経平均 8339円(1.31) → 8363円(2.28) +0.3%
TOPIX 821ポイント(1.31) → 818ポイント(2.28)▲0.4%
日経JASDAQ 997(1.31) → 990(2.28) ▲0.7%
NYダウ 8053(1.31) → 7891(2.28) ▲2.0%
NASDAQ 1320(1.31) → 1337(2.28) +1.3%

【株式指標】

       東証1部    東証2部    JASDAQ
時価総額   241兆円   4.7兆円   7.1兆円
予想PER   33倍     16倍     17倍
PBR    1.23倍   0.69倍   1.05倍
配当利回り  1.43%   2.09%   2.15%
(炎)

 

 

このページのトップへ