フジミインコーポレーテッド(店5384) 2000/06/14更新

2000/06/14(水)

フジミインコーポレーテッド(店5384)☆☆☆☆

  フジミインコの株価が4000円台に乗せてきました。フォローとして足下の状況を報告させていただきます。

部門別(売上:%)(単体)

ハードディスク向け 4月 前年比−43.4% 計画比(単月の予算)+9.8%
5月 前年比−31.6% 計画比+14.2%
 単体での今期HD向け売上は26億円、4月の金額ベースでは3億円に届かないレベル。連結では今期31.2億円の計画で4月は3億円前後の売上。
 海外中心に回復傾向だが、まだ数字には現れていない状況であり、前年比マイナスが続くものの、予算ベースでは計画をクリアーしている。
 ご存知の通り、IBMが2.5インチ超でガラスディスクを採用しだしたが、同社ではPC(ローエンド)までガラス化されるのは無理があろうとの考えであり、当然AVのデジタル化でもコスト上の問題からアルミディスクとなろうと「億の近道発行プロジェクトチーム」と同様の考えだ。
 AVが立ち上がっても、そう直ぐに売上面での貢献があるわけではないが、株価の面では大きなポジティブ材料になろう。
 ただ、1つだけ気をつけないといけないことがある。通常ディスク1枚に対し両面を用いヘッドを2個搭載するが(1プラッタ2ヘッド)、昨年片面しか使用しない1プラッタ1ヘッドが出てきたことで、同社の今期計画にはこれ以上1プラッタ1ヘッド方式が出てこない前提での予算なのだ。片面しか使用しなければ、それだけ同社の研磨剤も需要が落ちることを意味しているが、我々は片面だけでは容量当たりのコストを考えると、そう大きなニーズがマーケットにあるとは考えていない。

ウエハー向けラッピング 4月 前年比+27.2% 計画比 +9.9%
5月 前年比+20.0% 計画比−11.3%

ウエハー向けポリッシング 4月 前年比+20.1% 計画比−4.0%
5月 前年比+36.7% 計画比−7.1%

ウエハー全体 4月 前年比+23.4% 計画比+2.2%
5月 前年比+28.8% 計画比−9.0%
 ウエハーの伸び率は、マーケットがタイトになっているのを読者の方々もご存知であると思われるが、それが数字に現れている。更に来期以降、300ミリウエハーが立ち上がってくればメーカーの歩留まり低下も起こり、併せて同社の同部門は当分の間堅調な推移が予想される。

水晶向け 4月 前年比+41.4% 計画比+17.4%
5月 前年比+23.6% 計画比 +8.1%
 携帯向けに部品がかなりタイト。

CMP向け 4月 前年比+98.4%  計画比−2.0%
5月 前年比+167.3% 計画比+53.1%

 CMPについては、「過去のイチオシ銘柄」の荏原(4/5掲載、執筆・大原部長)をご覧ください。

ワイヤーソー向け 4月 前年比−28.4% 計画比−46.0%
5月 前年比−15.0% 計画比−41.9%

 この部門は利益があまり出ないのでNA。


 全体では、

自社製品全体 4月 前年比−1.4% 計画比+2.4%
5月 前年比+6.0% 計画比−3.0%

総売上 4月 前年比−0.1%  計画比+8.0%
5月 前年比+14.5% 計画比−0.1%

 となっており、計画以上の推移であります。
 以上フォローでした。

 最後に、5月23日にリリースされた新製品について少しだけ書かせていただきます。

 私は全く知らなかったのですが、新製品として溶射材なるものを同社は発表しております。
 素材に対し、金属・セラミックを溶融させたものを高温の状態で吹き付け、表面処理を施すもので、サーネットと呼ばれる溶射材で従来不可能であった領域の表面処理が可能となるそうです。例えばダイオキシン問題で高温燃焼させる焼却炉・自動車エンジン周りなど耐熱性が必要なもの、トンネルのシールド工法に用いられるビッドの刃などの寿命を伸ばすためのコーティングなど。

 余談ですが、自動車のエンジン周りについて、自然吸気(加給機:つまりターボないしスーパーチャージャーなしのエンジン)エンジンに比べ、ターボエンジンはかなりの発熱量になります。しかしながら10年位前から叫ばれているリーンバーンエンジン(希薄燃焼)、究極はトヨタのD4・三菱のGDIなどは今まで完全燃焼領域(理論空燃比14.5ないし14.5対1と言われておりメーカーによって若干の違いがある)を用いていたのと違い、理論空燃比から大きく乖離した状態の異常燃焼領域を用いている。
 三菱GDIが燃料1に対し空気40、トヨタD4は燃料1に対し空気50、三菱がハイオク仕様に対し、トヨタはレギュラー仕様(GDIも当然レギュラーが使えます。但しノックセンサーでの進角装置がついておりましょう)。
 ハイオクはオクタン価が高い燃料で、ノッキングを防止し、通常圧縮比の高いエンジン(1気筒当たりの排気量に対し燃焼室の狭い設計)などに用いられますが、リーンバーン領域になりますと燃焼温度は急上昇します。
 通常、改造したエンジンの燃料調節はまず燃料を濃くしたセッティングから、徐々に薄くしてベストな状態に持っていきます。なぜ薄い状態から燃調をとらないのかというと、薄すぎると異常燃焼でノッキング、最後には焼き付いてしまうからです。

 このように、自動車のエンジンはリーンバーンが盛んに言われていますが、コージェネレーションの世界にもリーンバーンがどんどん採用されていくことでしょう。

 溶射材の話を聞いて、同社に対し益々強気になった訳ですが、従来の溶射材マーケット500億円以外に、同社はいろいろな方面で活躍していくことになりましょう。売上は今期若干ですが、来期から立ち上がっていくことになりそうです。2年前からやり始めて引き合いは強いらしく、2003年時35億の売上と控えめに公表されておりますが、実際は??億くらい見ているようです。

 最後にこの溶射材、粒子の品質が難しいらいのですが、同社は丸いモノを作るのが上手な会社です。
 もうひとつ。昨晩、特許庁のHPを見に行きましたが、同社の溶射材での特許が見つかりませんでした。出来たら技術的な評価もしたいものです。(両津)

2000/05/09(火)
フジミインコーポレーテッド(店5384) ☆☆☆☆
 シリコンウエハー用、HDD用、水晶デバイス用の研磨材で世界的に高いシェア(70%)を誇っています。売上構成は、HDDが15%、シリコンウエハー35%、水晶デバイス9%、CMP向け6%。その他30%。

 ウエハー向け売上は、前期2000年3月期に75億円と2桁の伸び。今期2001年3月期はさらに90億円を見込み、20%程度伸びるでしょう。HDDは、98年3月期にピーク69億円の後、前期は最悪期で40億円を割り込みました。しかし、今期に入り、4月の単月売上は3億円後半と、久々に40億円ペースに戻りました。私は、アルミ基板が安定的に伸びることに確信があるため、今期のHDD売上は50億円に回復すると見ています。
 水晶デバイスは絶好調で、2桁の伸びを数年はキープするでしょう。

 一般的にHDD部材は、ここ数年、一台当たりのディスク枚数が減少していくという逆風に加え、業界の慢性的な供給過剰下で、HDD単価の厳しい下落に苦しんできました。さらに、アルミ基板研磨に収益を依存していたフジミは、ガラス基板、プラスティック基板への代替の脅威にさらされてきました。しかし、ここにきて、ようやく明るさが見えてきました。

 アルミがガラスに替わる。そうなると、研磨材の消費量は激減します。世の中は、いずれそうなっていくというコンセンサスです。アルミは、横ばいを維持できれば上出来という悲観的な見通しのもと、フジミの株価は、97年の7500円から下落、今年に入って、一時3000円を割り込みました。現状は4000円程度までリバウンドしています。

 ガラスディスクのよさは、平坦度です。平坦度は、記録密度の向上に欠かせません。ヘッドとディスクの距離をできるだけ狭くしている関係上、平坦度はもっとも重要な要素でした。アルミがガラスと同じレベルの平坦度を出すためには、基板を厚くする必要がありました。しかし、基板を厚くすれば、それだけ重くなり、モーターへの負担が大きくなってしまいます。そのため、アルミを厚くすることは不可能でした。ところが、記録密度が劇的に向上し、HDDの1台当たりのディスク枚数が2枚程度になると、モーターの負担が軽くなり、結果として、アルミを厚くできるようになりました。価格はアルミがまだ安い。
すなわち、アルミはガラスに置き換わらないのです。

 今年からAV用途にHDDが普及していきます。このHDDはローエンド品です。すなわち、コスト重視の製品になります。ガラスがこのセグメントをとることはありません。プラスティックは平坦度の面で難しいでしょう。量産実績があるアルミの優位がはっきりしました。

  • 古いもの(アルミ)が新しいもの(ガラス)に置き換わる。その場合、新しいものへの投資が有効。
  • 古いものが新しいものに置き換わると信じられている。しかし、実際は、古いものが延命することになった。その場合、売り込まれた古いもの(を生産する会社)への投資が有効。
  • いずれにしても、なぜ、置き換わるのかをしっかり押さえておくこと。
置き換わるという事実ではなく、その根拠を押さえることが、株式投資のポイントです。

 フジミの業績不安はかなり軽減されています。リスクは低い。会社は5/23の決算発表で、今期予想EPS180円程度で出してくるでしょう。しかし、期中増額修正で200円程度になると読んでいます。それは、HDD向け売上を40億円程度で出してくるからです。高い市場シェア、強いモメンタムが揃う今期は、6ヶ月以内に6000円台が見込まれるはずです。
目標6000円で「買い」。

 同様の理由で上村工業(大4966)も買いです。読者のみなさん、理由はおわかりですか????(大原部長)

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