放電精密加工研究所(店6469) 2000/10/13更新

2000/10/13(金) 

放電精密加工研究所(店6469) ☆☆☆
 
  昨日の続きです。

(3)表面処理事業
 前期の同事業の売上高は407百万円と、前期比4.2%の減収に終っており、営業赤字の事業である。現在の売上はバイク及びガスタービン向けにほぼ限定されている。
 バイク向けでは中型クラスでエキゾーストマニフォールド(エンジンのブロックから出た直後の排気集合管)を黒くメッキした様なものが一時流行したが、その表面加工を同社が手掛け、バイクメーカー1社に卸している。この排気管は、現在ステンレスが多用化されており、一種の流行ということもあり、先行きはバイク向け売上がゼロになる可能性もある。
 ガスタービン向けとは蒸気タービン向けであり、前期はバイク向けとともに受注が減少した。
 これを読む限り、同事業は全く期待出来ないように思われるが、実は全く反対である。金属などを温度や酸化から守るためのコーティングとして、現在はメッキが用いられているが、これからはメッキに代わって同社などが扱う表面処理が多様化される可能性が高い。
 一口に表面処理といっても色々ある。一つに溶射と言うものがあるが、溶融したものを吹き付け、表面を処理する技術では国内ダントツのトーカロ(店5961)や、最近参入を果たしたフジミインコーポレーテッド(店5384)、そして同社など(同社は溶射にはあまり注力していない)、表面処理のトップに位置する企業はこれから大きく成長する可能性がある。表面処理加工は最近になって出てきたわけではないが、使うユーザーの方にその意識がないか、詳細まで知られていなかったことが背景にあるようだ。
 同社の表面処理は、米国サーメテック社からの技術導入でサーメルコーティングを、米国ユナイテッド・テクノロジーズ社からゲーターガードコーティングを導入している。
 サーメルコーティングとは、数ミクロンの金属アルミニューム粉をベースとした塗料を金属表面にコーティング、焼付け処理を施し、表面改質を行なうもの。特徴は防錆・高温ガスによる酸化防止など、世界の航空会社が採用しており、最近は民需製品にも利用されている。
 ゲーターガードコーティングとは、耐摩耗・耐衝撃・耐侵食の高品質プラズマコーティング。溶射材としてクロム・カーバイト・トリバロイ・タングステンカーバイトの特殊合金類。
 同事業は来年黒字転換する見込みだが、同社では一番注力し、更に資源を投入していく分野である。どれだけの分野・ユーザーに認知されるか、マーケットの規模は想定できない。しかしながら同事業の売上が、短期で同社の主柱になる可能性も否定できず、同社の牽引役となろう。利益率は残念ながらノーコメントとさせてください。

 

(4)機械装置事業
 前期売上高は大型専用機械2台と、当社が開発した「複合生産システム」の実証を担う加工センターが受注を伸ばし、234百万円と52.2%の増収であった。表面処理事業と同じくまだ赤字事業であるものの、この事業の将来性も非常に明るいと推測される。
 理由はとんでもない機械を開発してしまったためであり、その特許は以下の通り。

【公開番号】 特許公開平11−320300
【公開日】 平成11年(1999)11月24日
【発明の名称】 複合加工装置
【氏名又は名称】 株式会社放電精密加工研究所

 多品種少量生産が可能であり、高寸法精度を確保し、低コストで複雑精密加工が可能である複合加工装置を提供するとなっており、NC装置加工及び塑性加工でのメリットのみを追求したマシンであり、異形状の積層を自動で製作出来るマシンを、世界で初めて開発したのである。
 展示の段階で、トヨタ自動車の前社長である奥田氏が感激もしくは感心したと言われ、10月末に東京ビックサイトで開催される展示で見ることが出来る。海外向けの売上がほとんどない同社であるが、このマシンは世界に向けて販売していく予定であり、マーケットの規模はさっぱりわかりません。
 しかしながら一つ問題があるそうです。それはユーザー側の技術者が、全く新しいマシンのため、新たな設計が可能であるかどうかということ。だがそれなりの売上にはなりましょう。(機械事業は来期黒転予想)

 

【総論】
 同社のユーザーは三菱重工・IHI・日産・トヨタなど、日本を代表する企業が多く、約300社と取引がある。同社の売上内容を見ると、こうした重工長大産業から、また直近の売上推移からも成長イメージとかけ離れている。
 しかし元来技術指向の同社であり、複合マシンを開発出来たのも、汎用・専用機械を問わず、当社独自のスペシャルマシンに更に改造を加え、償却と縁の無い程まで徹底的に改造してきた技術が、自ら販売する世界で初めてのマシンを可能にしたわけだ。この数年間は然程業績が伸びなかったが、内部では相当の資源投入を実施し、その成果が新たな分野である表面処理及び機械事業で花開こうとしている。

 現在の60数億円の売上は、早急に100億円に到達すると考えられ、3年後・5年後には現在の認識と違う姿になっていよう。マーケットは光ファイバーの材料にポジティブだが、同社にはそれ以上の材料がかなりある模様である。
 公のことでいくと、まず8月8日に日刊工業新聞に掲載された東大の超音波加工におけるマイクロマシンだが、これは同社が絡んでいる。

 利益は売上拡大に伴う以上にアップしましょう。当然自動生産システムなどお手の物だから、売上原価は前期売上高が減少したにも拘わらず70.5%から67.5%に減少している。今後は更に原価比率は下がり、粗利は高まるだろう。
 但し、販管費は下がらない。R&D・設備投資・人も増加し、特に営業は現在30名だが、今後はかなり力を入れていくことになろう。

 時価総額が小さく、機関投資家の買いは期待できませんが、将来は非常に有望な企業です。

☆☆☆(サイズがもう少しあれば☆の数を増やすのだが…) 

2000/10/12(木) 

放電精密加工研究所(店6469)
 
  同社は昨年10月に公開し、同じ頃公開した駿河精機と比較する声も一部聞かれましたが、光関連という話題を囃し、駿河精機の株価は安値から3倍に、片や放電加工はジリ安の展開となってしまいました。

 先達て日本ガイシを少しばかりリサーチしていたこともあり、放電精密加工研究所には興味がありました。理由は、同社の売上上位3番手の顧客が日本ガイシであるからです。
 リサーチするための前準備があまりなかったのが残念でしたが、それでも同社の技術的な強さを感じ、最近停滞していた売上も拡大期に入ってくると思われます。
  簡単ではございますが、同社の4つの部門を2つずつ2日に渡ってご紹介したいと思います。
 本日は放電加工事業と金型事業についてです。

1.放電加工事業
 放電加工とは、機械加工と異なり電気エネルギーを利用した特殊加工である。被加工物と加工工具である電極を絶縁性の加工液中に浸けて、電圧をかけることにより微細な組織分離加工を繰り返す方式である。
 他にも
、1)形彫放電加工…被加工物に対する形状電極を作成し、それに応じたミクロンレベルの精密三次元加工を行うもの。
2)STME電解加工…工作物と電極の間に電解液を流入させ、工作物と電極に電圧にかけると工作物表面が電解作用により溶解することを利用した加工法。
3)ワイヤーカット放電加工…放電加工機の電極にワイヤーを用いたもの。0.2ミリメートル程度の細いワイヤー電極と金属工作物の間を、NC装置によって所要の形状に相対移動させながら放電現象を発生させ糸鋸盤のように切断加工する。

などの加工方法があります。

 放電加工事業は、原動機・タービン向けが同事業の5割以上を占めており、特に三菱重工向けの比重が高い。他の放電加工は自動車向けが多く、トヨタ、日産、ホンダなどに同社の加工技術が生かされている。

 終わった前期の同部門売上は、25.7億円と6.9%の減少であった。産業用ガスタービン加工向けが好調であったが、自動車向けに受注が減少した。

 今後同事業の伸びを考えた場合、自動車向け受注は生産台数にパラレルに近い動きを示しそうで、あまり期待は出来ない。

 一方、原動機・タービンは三菱重工の受注の話題や、今後相当なマーケットになるであろうと思われるマイクロガスタービンなどが牽引し、同事業を2桁成長に押し上げる事であろう。

 日本では放電加工の専業がほとんどなく、一部の鍍金屋さんが細々とやっているか、それともメーカー(大企業)が内製している程度。同社は国内でダントツの企業である。放電加工では被加工物を斜めにしかも曲がりくねったようにポートをつくる事も可能であり、その精密さにおいて同社は群を抜いている。

 前後しますが、ワイヤーカットはエピウエハ用インゴットの切断用として、信越半導体と共同で特許を出願しております。

2.金型事業
 金型事業は大きく2つに分かれる。
 1)住宅
住宅向けとはトステム向けのアルミサッシ向けである。住宅着工件数にパラレルであまり期待は出来ないが、今年1本、2年後4ラインを自動化ラインにし、コストダウンを図っていく。
  2)ハニカム
自動車用ハニカム構造担体製造用金型を製造しており、全量日本ガイシに納めている。ハニカム構造担体とは自動車(産業向けも含む)の排ガス浄化用触媒のことであり、最近環境規制が急激に厳しくなる中、日本ガイシの技術で国産自動車メーカーは世界で一番クリーンなエンジンを作る事が可能になっている。先達て発売された世界で一番クリーンなエンジンを搭載する日産のブルーバードシルフィーは、日本ガイシ製のハニカム触媒を使っているのである。このハニカムは世界で一番の目の細かさを持っており、400セル/インチ平方で、1セル当たり2ミルである。1ミルとは1000分の1インチで25.4μmの長さである。トレンドでは1979年に6ミル、1995年に4ミル、1998年に3及び2ミルになってきており、現在のハニカムは4ミルが主体だ。日本ガイシは国内の自動車ハニカムマーケットの7割以上のシェアをもっていると思われ、それを製作するためには放電精密加工研究所の技術がないと不可能である。実際の製作では同社製金型を日本ガイシに納め、ガイシがハニカムを製作しており、技術分担として同社が精密金型、ガイシが押し出し技術を担当している。ハニカムではガイシと同社は共同で特許を出願している関係もあり、お互いの技術融合が世界的環境対策に一役買っている状況だ。

 二酸化炭素による温暖化が叫ばれる中、リーンバーンエンジンは増え、また環境汚染の問題も触媒マーケットの拡大に繋がり、日本ガイシのハニカム及び同社の金型は今後相当な売上げ増が期待できる。

 同社では金型事業の成長を1桁後半程度の伸び率と弾いているが、これは非常に堅い想定である。

イチオシ度については、明日掲載します。

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