シンワ(店6880) 2000/10/04更新
2000/10/04(水) 

シンワ(店6880) ☆☆☆

 今年も連結子会社のシンワハンガリーが、3−4億円程度の赤字を出す可能性を残しております。シンワが中国に進出した時も、完全に軌道に乗せるに約5年の年月がかかりました。ハンガリーは工場稼動後1年数ヶ月しか経過しておりませんので、まだ時間がかかりましょう。
 同社では来期に収益トントンもしくは若干の赤字が残る可能性を示唆しており、再来期から収益化していくものと予想されます。そのためいろいろな対策を打っていくようです。
 現地部品の精度を上げ、組み立ての歩留まりをアップ、新事業の開始、顧客拡大など。

 新規事業に関してはカーオーディオパネル部品を扱うため、現在技術コンサルタントを雇い、レベルアップに励んでおります。顧客拡大の面では、今後相当大きなビジネスチャンスがあると思われます。同社の取引先であるVDOが他社との合併観測が流れており、その折りにはかなりの売上げ金額になりましょう。また、日系企業からもオファーが来ているようで、シンワハンガリーの売上には今後かなりの期待ができましょう。

 しかし前回記述しましたが、光ピックアップ事業の売上は、ピックの応用部品に進出しない限り、来期が頭打ちになる可能性が大です。トータルで考えますと900円台という安値圏の株価ではあるものの、物色するにはもう少し様子を見たいものです。

 内藤社長は自社の事を「真面目な会社」であると言う。
 他の幹部に「なんでもっと利益の出る事業をやらないのか?」と聞いたのですが、「昨年の株式相場であったような、投資家受けするITなどという言葉でごまかすようなことは絶対しない。うちは3番手以降に進出し、製造マシーンも汎用機で特に手を入れず、部品・製品をひたすら安く製造していく」と言い、誰が何と言おうとそれを実行してスタンスだと。
 その幹部も「真面目な会社だ」と言われておりましたが、その通りであります。同社は売上1000億円という目標があるようですが、時間がかかったとしてもきっと達成するでしょう。

 内藤社長の考えを御理解される方で、長期投資のスタンスであるならば、とても良い投資対象と言えるかもしれません。

2000/09/27(水) 

シンワ(店6880) ☆☆☆

  昨日の続きです。

 前期連結業績は大幅な減収減益に終った。売上高は281億円と16.2%減少し、経常利益に至っては11.4億円と、61.4%減益である。売上面では為替の影響と競争激化に加え、カセットメカからCDメカへの切り替えに対する戦略商品投入が遅れカーオーディオの売上が減少、利益面ではグローバル展開による欧州製造拠点(ハンガリー)の立ち上げロスが響いている。
 更に純利益においては金型の評価損を計上し、EPSはたったの9.6円になってしまっている。株価は昨年に4000円を付けるなどそれなりの評価を受けていたのだが、その後急落してしまった。
 大原部長が春頃(4月だと思うが)内藤社長にお会いし、投資妙味及び株価下落に関することを億近に掲載しておりますので御参照してみてください。

 同社の売上はカセットメカが約半分、残り半分が光関連電子部品となっておりますが、実際の売上構成は偏っているのです。何が偏っているかと言うと、顧客別売上です。
 同社の顧客はビクター、アイワ、ソニー、日立、松下、パイオニアー、アルパイン、ケンウッド、クラリオン、シントム(シントム系)、デルファイ、VDOなど幅広いのですが、光電子部品というのはピックアップのことで、これは日立グループの企業と共同開発し、その日立系の会社1社のみにしか収めておりません。よって全体の売上のうち約半分は日立系企業1社となります。

 世界的に光ディスクは拡大の中、ピックアップは前年比倍以上の伸び率を示しておりますが、その代わり単価も下がっております。同社の場合、前年約20%の下げです。足許DVD用を月産120万個、CD用を200万個生産。単価はCDが?$、DVDが??ドルです。DVD用は製造個数引上げ要請がきておりますが、来年1月に250万個体制に持って行きます。片やCDは来年中に約半分まで落ち込む可能性があります。ですからピックに関してはあまり過度の期待は禁物です(同社はそれ以上の増産をしない予定にしており、ピックの売上は来期で頭打ちになるかもしれません。しかしピックの他への応用の可能性は残しますが…)。

 またハンガリー工場がうまく立ち上がってくるかがポイントになります。所在地別セグメント情報によれば各地での売上・利益は以下の通りです(前期)。 (単位:百万円)
日本
東アジア
東南アジア
欧州
北米
トータル
売上
5623
18365
3280
785
6
28061
営業利益
-160
1591
135
-427
-7
1224

 前期はハンガリーが足を引っ張る形になっております。ハンガリー工場の名称はShinwa Hungaryといい、1997年9月に設立され1999年1月に組み立て、4月にプラスチック、9月にメタル部品を稼動させており、まだ1年数ヶ月しか経っておりません。計画以上の立ち上げロスが発生し、トランスファーの速度が思った以上に上がりません。
 部品事業もまだまだです。プラスチックとメタル部品を組み合わせると良質なメカが完成せず、同社の強みである組み立てがうまく生かせません。これは現地で仕入れている部品に問題があるためで、技術指導しながら部品の精度を高めて行くことになりましょう。

 ではなぜ同社が欧州生産においてハンガリーを選択したのか簡単に記述します。

  • EUへのアクセス
  • 政治的安定
  • 低廉な労働力
  • 良好な労使関係
  • 技術系の人材
  • 投資優遇措置
  • ユーロにペッグした為替
  • 良好な対日感情

と会社側では申しております。

 しかしシンワの素晴らしさは他にあります。ハンガリーに進出した外資系企業はほとんどが、首都ブタペストからオーストリア寄りに工場を構えております。しかしブタペスト近辺においては進出企業が増えているため、人件費及び福利厚生を含めたコストがどんどん上昇しているのです。ハンガリーではランチ代の一部を支給するなどの措置は当然であり、各企業人員確保のためいろいろな手段に出ております。
 その一例はソニーです。ソニーでは従業員の送り迎えをやっており、そのためにバスをなんと50台も手配しております。一方、シンワはというとこれら進出企業と全く正反対の地方でハンガリーで2番目の都市であるミシュコルツに進出しております(ブタペストから約200キロ)。

 ミシュコルツの優位性は以下の通りです。

  • ブタペストより低廉な人件費
  • 豊かな労働市場
  • 厚い投資待遇
  • 外資系企業の少なさ
  • 技術系人材の豊富さ
  • 総合大学の存在

 ミシュコルツという町はかつて重工業のさかんな町で、技術者は豊富にいます。またミシュコルツ大学という、日本で言えば京大に相当する大学があり、この大学はかつて米国NASAからハード・ソフトを一式引き受けるなど、技術的は定評があります。

 この町はかつて栄えていたのですが、今は廃れたようで人材は豊富。一般ワーカーの月コストは円ベースで25000円です。(首都ブタペストの物価はミシュコルツの1.4−1.5倍です)しかしこの町には外資系企業が2社しかありません。その1社がシンワであり、そのメリットを享受する筈だったのですが、まだうまく立ち上がっていない。

 そこにはやはり原因があります。それは東欧ということでかつて共産圏であったことです。私たちでも戦争経験者と戦争を知らない人たちの世代では、考え方に違いがあるケースがありますが、ハンガリーの場合、かつての共産主義を知っている人と知らない人ではかなりの意見の違いがあるようです。
 30代以上の方はやはり昔の考えが残っているようで、汗水出して働くという意識が低く、反対に20代の人は今の中国人のようにどんどんアイディアを出して働いて少しでも稼ごうという意識があります。こういう人達を如何にうまくコントロールしていくかシンワの見せ所でしょう。

 またハンガリーの個人所得税も問題の一つです。平均的な給料25000円だと税率は約10%位らしいのですが、これを少しでも上回ってくると税率が急にアップします。具体的には30000円に達すると税率は40%に跳ね上がり、25000円から30000円までの間が5段階に分かれております。ですから働けば急に手取りが減ってしまう!?

 それと国の福利厚生が良いのも上げられます。失業したとしても月に1万円位は支給されますので、それを考慮すれば働かない人が多いのも肯けます。
 因みにミシュコルツでは失業率は約15%です。実際は働く場所がないと言うこともありますが…。

 今期もシンワハンガリーにはあまり期待が持てません。しかし今後の売上はかなりの期待が持てそうです。

2000/09/26(火) 

シンワ(店6880) ☆☆☆

  昨日は風邪で体調を崩し、あまり書けませんでした 申し訳ございません。

 本日は藤沢薬品の総合感冒薬である『プレコール持続性』を飲んでおりますので大丈夫。この薬はとても効きます。2カプセル中にイソプロピルアンチピリンを150ミリグラム含んでおり、ピリン系薬品なのです。かなり前にピリンショックなる言葉を聞いたことがありますが、ピリンの副作用が問題になった時期があります。それから非ピリン系が主流になり、大衆薬でお目にかかることはなくなりました。しかし病院では、入院患者が風邪を拗らせ周りに感染するとの配慮から??シオノギ製薬のセデス(感冒剤:セデスでも非ピリン系があったような気がする)を使っており、私も入院中に何度か服用しその効用には驚きました。そして数年前にこのプレコールを知り、酷い風邪もしくは仕事の関係上どうしても休むことができない時に服用しております。けれど眠気・胃部の不快感など副作用も他の薬より強いですね。因みにうちの家内にはプレコールはあまり効かないようです。

 さて話が逸れてしまいましたが、本日はお約束の通りシンワ(店6880)について2回もしくは3回に分けて記述いたします。

 シンワと言う会社は、オーナーである内藤社長の人格によって形成されたものである様な気がします。内藤社長の見た目はブスッとしておりますが、話す時はいつもニコニコされていて、独特かつ少しだけ関西ナマリの残る話し方で、周囲の人からは好かれるタイプかな?
 シンワはある部材や製品に進出する時、3番手ないし最後発でスタートします。しかしながらお得意の低コスト手法で最後まで生き残り、残存者メリットを享受する企業です。
 最後まで生き抜くためには徹底したコスト削減。本社は東京都中野区ですが、外見・中身ともアパートのような建物で、連結人員6800名の内、本社はたったの90名弱。生産はVAによる合理化はしているものの、基本は手作業。安く作るためにひたすら労働コストの低い所を探す。これを徹底しているのです。

 日本の企業が海外に進出する際、ローカル人に権限を委譲と、ローカルスタッフを尊重するようなことを言いますが、実際はどうでしょうか?
 その点、内藤社長は違います。本当に委譲してしまうのです。他の企業ならラインはセル方式で製造工程の状況を統計的に分析し、スタッフがアイディアを出しながら工数を削減し…と難しいことを言うと思いますが、内藤社長に言わせると、「うちは普通のセル方式」と呆気ない。
 しかし現地の品質の良くない部品でも、何とか技術指導して現地の部品を使い、ローカルスタッフにも思い切って権限を委譲し、仕事に対するやる気を起こさせる方法はなかなか出来ることではありません。

 同社は他社では信じられない様な人事異動があります。まず総務部長ですが、それまでの方に代わって中村さんという女性部長が誕生しました。仕事に対する熱意は凄いのなんのと、強制されている訳でもないのに、終電が無いのは当たり前と言います。もっと驚くのは今年4月に入社した社員です。この社員は大阪外語大学出身で4月に入社したばかりですが、6月にはなんとハンガリーに転勤です。しかもこの方、男でなく女性です。
 内藤社長はやる気のある方にはそれなりの仕事をポンと与えてしまうのです。ハンガリーは立ち上がり間近と言うことで赤字が出ており、同社の連結業績が伸びない要因になっておりますが、それは権限を思い切って委譲したことが一部背景にあります。
 3月まで現地人にほとんど任せていたがいろいろ問題が発生し、遂に内藤社長による梃入れが開始されたのです。それでも本人は、赤字の原因は権限を委譲した自分にあると言い、決してハンガリー人に原因があるとは言いません。

 内藤社長と一緒に酒を飲む機会があったのですが本当に素晴らしい方だと痛感し、一度はこの方の下で働いてみたいと一瞬思ってしまいました。

 続編は明日。

2000/07/26(水) 

シンワ(店6880) ☆☆☆

 1週間ほど充電させて頂きましたが、またよろしくお願いいたします。

 さて、億近臨時休業中に、某損保系部長ファンドマネージャーとシンワ(店6880)に訪問取材し内藤社長と面談して参りました。同社株は昨年4000円の株価を形成し、何度か億近読者からのQ&Aもありましたが、私が全くフォローしていなかったこともあり今回行って参りました。

 同社は主に車載用カセット、CDなどメカ部分とDVDのピックアップを製造供給しているメーカーだ。顧客は米国大手デルファイ、VDD、フォード(ビステン)、クライスラー(三菱経由)など、純正部品として、日系では日立がメインで他、ビクターにカセットメカ、アイワにカセット及びCD、ソニーにカセット、パイオニアにカセット、クラリオンにカセット、アルパインに部品、松下などアフターパーツを収めている。
 この業界はグローバル化がどんどん進み、今までの系列色より高品質でより安く供給可能なメーカーであれば、どんどんビジネスが拡大できる環境になりつつある。同社の強みはそのマーケット環境にマッチしており、世界3極製造展開を作り上げている。

 その中で更に同社の強みは、ローカルスタッフの扱い方にあると内藤社長は言う。製造方式は特段珍しくもないセル方式で、製造器械は汎用マシンを当社独自に改造している程度であり、海外に進出しているメーカーはその程度でも自社の優位性を強調したがるが、同社では本社による中央支配を全く行なっておらず、ローカルスタッフに権限を譲渡し運営されているのである。部品もできる限り現地調達を進めており、合わせて長い経験が生かされているのである。ライバルはタナシンデンキで、この2社で世界シェアの3−4割を占める。

 前期は、為替の影響とカセットからCDへの切り替えがうまく対応できず、更に競争激化による価格ダウンに見舞われ大幅な減収減益になり、投資家の期待を裏切る形となってしまったが、今期は大幅な増収が期待できる。DVDが日立メディア向けに、ピックアップ関連も相当な快調ぶりを見せていることが要因だ。
 足元、20数%以上の計画より遥か上をいく売り上げの推移なのだが………利益となると少し話が違ってくる。

 アジア・米国など良いのだが、唯一ハンガリー工場が足を引っ張り、生産体制・部品供給など間に合わない面と、いろいろ資産整理損など発生してくる模様なのだ。このハンガリーのマイナス面を、好調なピックアップと好調なアジア地域でカバーしたいのだが、果たしてできるかどうかである。

 株価は、高値から4分の1まで低下したが様子を見たい。

2000/04/10(月) 

シンワ(店6880) ☆☆☆
 ジャーデンフレミングの有名ファンドマネージャーが移籍したのに伴い、そのファンドから大量の売りが出たため、株価は昨年10月高値の4000円から1130円(4月10日)に大幅な下落。時価総額は70億円と、機関投資家としては手が出ない水準に落ち込みました。

 内藤社長にお会いしました。「億の近道」の読者にうってつけの割安株ということで紹介させていただきます。

 車載用カセット、車載用CDの売上が約40%、光ピックアップ(CD-ROM、DVD)向けが約半分です。中国のメイン工場に4500人が勤務しています。

 車載用カセットとCDは、大手自動車部品会社との長期契約を軸に、成長が期待できそうです。現在120億円程度のカセット・CD売上は、2004年に400億円を超えそうです。とくに出遅れたCDでは、新機種を投入します。3つあったモーターを2つにして、光ピックアップを割高なソニーからビクターに変更、そして、メタルカバーやプラスティック成形品などの現地調達比率を引き上げました。それでやっと材料費を9ドルに押さえました。製品価格は13ドルです。限界利益率は30%です。
 利益率の高い製品で限界利益が30%ですから、あまり、魅力のある事業とはいえません。すべての事業を平均すると限界利益率は20%程度です。その20%から経費を差引いて、営業利益率はベストケースで10%でしょう。

 このような事業は、だれがやっても儲りません。その場合、突破口はただひとつ。コストの安いところでつくり、本社機能をコンパクトにすることです。シンワは、現地生産、現地調達を基本にしています。中国の賃金は月60ドル程度です。調達も現地の企業を開拓しています。それは86年から中国に進出してきた歴史があるからでしょう。本社は現在100人いるのですが、今後1年で50人にまで減らします。ライバルはクラリオン、パイオニアなどですが、明らかにコスト競争力が違います。ライバルは国内生産、シンワは中国生産。ライバルは一部国内調達、シンワは全面的に現地調達です。これがクラリオンとかパイオニアとかだと、日本の下請けを温情で切れないなど、現地調達に全面的に踏み切れません。また、踏み切ったとしても、現地企業の開拓に時間がかかるので、シンワの優位は動きません。

 自動車向けユニット供給は、粗利が低い分、契約は長期的になります。たとえば、某自動車向けの契約では現状ほとんどゼロの純正CDが2003年には2百万台分供給することになっています。前期(2000年3月)に20万台にとどまったカーCDは、今期(2001年3月)は1百万台を計画しています。カセットは市場が厳しい中、コスト競争力を武器にライバルを撤退に追い込んでいき、今後10%程度の成長をカセット分野で維持できるとしています。

 中期計画では2004年度税引き前利益で45億円を見込んでいます。2004年3月の会社計画EPS410円。PER2倍台です。(ちなみにわたしの今期予想EPS90円。PER12倍台。)

#ビジネスの魅力は低い。限界利益率は20%。ただし、契約が長期的、リスクは低い。
#時価総額70億円では機関投資家が買わない。長期的に割安に放置される可能性。
#大物ファンドマネージャーの銘柄入れ替えに伴う需給要因も大きかった。
#それにしても株価1100円は割安である。でも、そんな株いくらでもあるか……。(大原部長)

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