東芝機械(東6104) 2001/04/10更新
2001/04/10(火)

東芝機械(東6104) ☆☆
 
 前回の続きです。

 アドバンテストが直描(直接描画装置)を製品化している。スループットは1時間辺り3−4枚で、現在の用途はASICやシステムLSIの一部と、研究開発用である。スループットの低さに問題があり、アドバンではツインコラム式で処理スピードを高めているが2つの調整が難しく、商用ではうまくいっていないのが現状のようだ。東芝機械も直描を視野に入れてはいるものの、X線の段階に入ってもマスクは必要であり、当分の間は直描装置の外販は見送る。しかし0.07−0.05ミクロンの次はEBステッパーの道が開かれそうであり、直描の技術に更なる磨きをかける次第である。

 現在同社では沼津の本社工場でEBを製造している。本社棟の道一本挟んだ棟にEB製造の拠点がある。設計は全て自社設計で、部材を外部委託。部材発注から部材が届くまでに約4ヶ月を必要とし、その部材をクリーンルームで組み立てる。

 クリーンルームは2段階になっており、クリーン度の低いルームで部材を組み立てた後、その横にあるクリーン度の高いルームで最終組み立て及び調整に入る。

 現在、クリーン度の高いチャンバーは7つあるが、同社では次世代0.1ミクロンの新製品を考慮し、2つチャンバーを増やすための工事に入っている。またEB製造場所は棟の約3分の1を占めているにすぎないが、他のスペースがいつでも利用できるよう、社内対策は既に打っている。

 EBの現在の価格は1台15−17億円とレーザーに較べかなり高いが、将来出るであろう0.1ミクロンは更に高くなりそう。しかしながら同社にとっては美味しいビジネスであることは事実。

 機械セクターのほとんどの銘柄は今期業績に期待が持てない中、オフセット輪転機事業を小森に売却し、60−70億円の減収が見込まれる中でも、同社は増収増益が維持できそうである。これは同社の半導体製造事業ががんばっていることに他ならないが、この半導体ビジネスの利益率を考えると、プロダクトミックスの変化で将来は高収益企業に変身する可能性もある。

 また同社はMOCVDの技術も保持しており、先行きは化合物がターゲットに入っているのかな?

今回は同社の特許を掲載する。

(発明の名称)電子ビーム描画装置
(出願人)  東芝&東芝機械
【発明の属する技術分野】本発明は電子ビーム描画方法に関する。

【0002】 【従来の技術】近年、電子ビームを用いてパターンを描画する電子ビーム描画方法は、光を用いてパターンを描画する場合に比べて、はるかに微細なパターン描画が可能であるため、リソグラフィープロセスにおけるパターン描画の主流となろうとしている。

【0003】この電子ビーム描画方法に用いられる電子ビーム描画装置の構成を図6に示す。図6において、電子銃52から放出された電子ビームは集束レンズ54で集束され、成形アパーチャ56に照射される。この成形アパーチャ56の像は投影レンズ58により成形アパーチャ62に結像される。ここで成形偏向器60によって、成形アパーチャ56の像の成形アパーチャ62上での位置を調整することにより、任意寸法の矩形あるいは三角形のビームを得る。成形アパーチャ62の像は対物レンズ66により縮小されて、試料80上に結像される。ここで、高精度主偏向器68によって、ビームを大きく偏向し、さらに高速副偏向器64によって、ビーム照射位置を微調整する。

【0004】【発明が解決しようとする課題】このような電子ビーム描画装置を用いてパターンを描画する電子ビーム描画方法においては、以下に説明する遠距離感光作用によるパターン寸法精度の劣化が問題となる。これを図7を参照して説明する。

【0005】今、図7に示すように試料80の表面に電子ビーム90が入射されたとする。試料80の表面に入射された電子の一部は反射されるが、他の電子は試料80の表面から二次電子を発生させる。この反射された電子および二次電子は電子ビーム描画装置の対物レンズ66の下面66aに戻り、これらが再反射されるとともに下面66aから二次電子92が放出される。これらの再反射電子あるいは二次電子が試料80の表面に塗布されたレジスト81にエネルギーを与え、レジスト81の電子ビーム90の入射された地点以外の領域も感光される。この現象を遠距離感光作用と呼ぶ。

【0006】この遠距離感光作用の及ぶ範囲は、ビーム照射位置から数十mmの領域に渡る。このため、平均照射量が、試料80の表面に数mm以上の領域に大きく分布している場合には、現像後のレジストのパターン寸法に大きな寸法分布をもたらすことになる。この問題は特に、光リソグラフィーやX線リソグラフィーに用いられる、レジストからなるマスクにおいて深刻である。

【0007】この遠距離感光作用の補正に、GHOST法を適用することが考えられる。しかし、このGHOST法は近接効果補正方法であるため、このGHOST法を用いる場合には遠距離感光作用のひろがり程度である数mmから数十mmにビームをぼかすことが必要となり、実用的ではないという問題が生じる。

【0008】また、電子ビームのショット毎に照射量を変えることにより、補正を行うことも考えられる。しかし、この場合、ショット毎の照射量データが必要となり、データ処理計算機への負荷が大きく実用的でないという問題がある。

【0009】このように従来の電子ビーム描画方法においては遠距離感光作用があるため、精度の良いパターン寸法が得られないという問題があった。これを避けるため他の方法を用いても実用的ではないという問題がある。

【0010】本発明は上記事情を考慮してなされたものであって、精度の良いパターン寸法を得ることのできる電子ビーム描画方法を提供することを目的とする。

【0011】【課題を解決するための手段】本発明による電子ビーム描画方法は、試料の描画領域内の点Yに単位照射量の電子ビームを照射したときの前記描画領域内の点Xにおける、遠距離感光作用による単位照射量当りの照射量密度分布ρ(X,Y)を求めるステップと、パターンを描画すべき、レジストが塗布された試料の描画領域をn(≧2)個の小領域i(1≦i≦n)に分割するステップと、描画すべきパターンに基づいて各小領域iにおける照射量Di を求めるステップと、前記照射量密度分布ρ(X,Y)および前記照射量Di に基づいて、各小領域iにおける遠距離感光作用による照射量密度Fi を求めるステップと、各小領域iにおける照射量密度Fi に基づいて、対応する領域の、遠距離感光作用による影響を除去するための照射量密度Ci を求めるステップと、各小領域i毎に求めた照射量密度Ci となるように、対応する小領域を電子ビームで照射するステップと、を備えたことを特徴とする。

【0012】なお、各小領域iにおける前記照射量密度Ci を求めるステップは、各小領域iにおいて遠距離感光作用による影響を除去するための補正照射量BiをFi+Bi=0となるように求めるステップと、オフセット照射量Bosを導入し、各小領域iにおいてBi+Bosの値が非負となるように前記オフセット照射量Bosを求めるステップと、照射量密度CiをCi=Bi+Bosとして求めるステップと、を備えるように構成しても良い。

【0013】【発明の実施の形態】本発明による電子ビーム描画方法の一実施の形態を図面を参照して説明する。この実施の形態の電子ビーム描画方法は、遠距離感光作用による影響を除去するための描画方法であって、その処理手順を図1に示す。

【0014】まず、レジストが塗布された試料上に電子ビームを用いて描画する前に、遠距離感光作用による、単位照射量当りの照射量密度分布ρ(X,Y)を決定する(図1のステップF1参照)。この照射量密度分布ρ(X,Y)は次のようにして測定される。レジストが塗布された試料の描画領域内の一点に一定の照射量の電子ビームを照射する。その後現像し、照射点以外のレジスト膜厚を計測することにより、遠距離感光作用による照射量分布を決定する。次にレジストが塗布された別の試料を用いて一定の面積の領域に上記一定の照射量よりも小さな一定の照射量の電子ビームを照射し、上述した場合と同様にして照射量分布を求める。上記2つの測定結果から、描画領域内の一点Yに単位照射量の電子ビームを照射したときの描画領域内の点Xにおける、遠距離感光作用による、単位面積当たりの照射量密度分布ρ(X,Y)を決定する。なお、最初の測定から照射点以外の照射量密度分布が求まり、後の測定から照射点における照射量密度分布が求まる。

【0015】照射量密度分布ρ(X,Y)は、照射点Yと測定点Xとの位置ずれ(ベクトル量)X−Yのみによって決まると考えても良い近似を得ることができるので、以下、この近似を用いることとし、ρ(X−Y)と表現する。多くの場合にはρ(X−Y)はベクトルX−Yの絶対値に依存しているとして近似しても良い。また照射量密度分布をガウス分布、マルチガウス分布、あるいはローレンツ分布、マルチローレンツ分布、または多項式分布で近似しても良い。また照射量密度分布ρ(X−Y)を、異なる複数の代表的な位置Yにおいて求めておき、それ以外の位置では内挿によって決定することも可能である。

【0016】次に、パターンを描画すべき、レジストが塗布された試料の描画領域をn(≧2)個の小領域に分割する(図1のステップF2参照)。この分割された小領域の大きさは、電子の後方散乱の広がりよりも大きな寸法とし、例えば遠距離感光作用による寸法変動の代表的な大きさ(10mm程度)の数分の1で良い。例えば図2(a)に示すように大きさが150mm×150mmである試料10の大きさが130mm×130mmの描画領域20を1mm×1mmの大きさの正方形の小領域25に分割する。

【0017】なおパターン描画に用いられる電子ビーム描画装置の偏向領域の大きさよりも小領域の大きさが大きくなる場合には、小領域の大きさを偏向領域の大きさの整数倍にすることが、描画効率を高くする上で好ましい。例えば、偏向領域を、一辺が500μmの正方形とすれば、小領域25を1mm(=1000μm)角の正方形に設定することが好ましい。図2(a)に示すように描画領域20が130mm角の正方形で、小領域25が1mm角の正方形とすると、小領域25の個数nは16900(=130×130)となる。このように分割された小領域25に、例えば左下から順に番号1,2,…を付ける(図2(b)参照)。なお図2(b)は図2(a)に示す、分割された描画領域20の左下部分を拡大した拡大図であって各小領域25に番号を付した構成となっている。

【0018】次に試料の描画領域に描画すべき描画パターンに基づいて各小領域i(1≦i≦n)における電子ビームの照射量Di を求める。ここでiは小領域に付された番号を示している。また照射量Di は、小領域iにおける、描画パターンに対応した照射量となっている。この照射量Di を求める方法としては、描画パターンに関する全描画データを展開して、小領域iに含まれる各ショットの面積の和を計算することにより求めることも可能であるが、描画データが階層構造を持っている場合には、なるべく上位の階層構造に含まれる面積を一括して扱うようにすることが計算効率上好ましい。小領域iに含まれるパターンの面積をSiとし、パターン描画の単位面積当りの基準照射量密度をQoとすると、Di=Qo・Siとなる。

【0019】次に各小領域i(1≦i≦n)における、遠距離感光作用による単位面積当たりの照射量密度Fiを求める。この照射量密度Fiは次の式を用いて求められる。

【0020】Fi=Σρ(Xi−Xj)・DjここでXi,Xjは小領域i,jの代表点(例えば中心点)の位置を示しており、Σは指数jについて1からnまで総和をとることを示している。なお、本発明者の知見によれば、50KeVの電子ビーム描画装置を使用した場合、照射量密度Fiは、描画データに基づいてパターン描画を行う際の照射量密度の高々数%である。(図表は省略しました)(両津)

 

2001/04/06(金)

東芝機械(東6104) ☆☆
 
 電子描画装置(EB)に注目する。

 旧東芝総合研究所(現在名:東芝セミコンダクター社)がLSIの寸法縮小及び微細化を課題として、電子描画装置の研究を開始したのが約20年前で、その後もEBは東芝本体で研究が継続されていた。i線からKrFへ移行の前に原画の製造をどうするかが検討され、EBを用いるスタンスをとった。しかし0.18ミクロン対応の装置を作るのに1台数十億円のコストが見込まれ、東芝機械に対し外販することで価格下げ要求がきた。平成7年、東芝から半導体のエキスパートが東芝機械に送り込まれ、商品として本格的なスタートを切ることになる。

 ここでEBについて簡単に記す。

 EBを製造しているプレーヤーは東芝機械、日立、日本電子、イーテック。装置の仕組みはイーテックが採用しているラスター方式と、日本勢が採用しているベクタースキャン方式に分かれる。

 ラスター方式は電子ビームを点状に狭めた上、マスク側を移動させ感光させる方式に対し、ベクタースキャン方式は電子ビームを点状よりかは大きい程度に収束させ絵を書くような感じ。この2つの方式の一番の違いは感光させる速度が全く違うことだ。

 レーザー方に較べ、電子描画の最大の欠点はスループットの低さであり、これを如何に克服するかが課題(複数使えばいいじゃないかと思いますが、マシンが高いのです)。

 ICの微細化が進んでいるのは皆さまもご承知の通りだと思いますが、この細い線を書くテクニックが同じベクタースキャンを用いる日本勢でも違いが出ております。

日本電子・・・2回多重
日立・・・・・4回多重
東芝機械・・・4回多重

 電子銃から発射された電子は電圧によるコリメータで狭められますが、ある程度の面積を保持させており、最終的には4角形のビーム形状にします。この4角形の電子ビームを描画領域iに照射したとしますが、それだけでは感光しません。更に描画したい領域方向に若干移動し再度照射。この2回の照射を受けた場所のレジストのみが感光するようになっております。この2回スキャンによる感光方法が2回多重で、日立、東芝機械は4回の照射による感光を用いています。

 しかし同社ではこの四角形のほか、三角形によるビーム形状を利用し、線と近隣の線幅が極端に近い場合は三角形状ビームを用い処理を施し、極細に対応しています。

 加速電圧は同社製EBM−3000、及び3500で50Kev、コリメータは3段階による電圧でビーム径を細くしており、ビームの絞りは1.25nmと他社を寄せ付けないレベルを実現している(最少は1.25、しかし実際はスループットの関係上2.25に設定)。照射領域当たりの(領域当たりの電子数とお考えください)電流密度はスタンダードで20A/cm2、最大40Aとこのレベルは業界であまり差がない。

 この結果、最終的に得る線幅は日立が0.2ミクロン(0.15ミクロンが可能かもしれないが、0.13ミクロンは厳しい)、他社も同程度で、同社の0.13ミクロンは最先端を走っているだ。

 かつてEBのシェアはイーテックがダントツであったが、現在では同社が5割のシェアを握るトップ企業。
 日立も同社と同じような手法を用いているのに、なぜ同社がトップに位置しているのか?

 1つ根本的に違うところがあるという。
 それは工作機械メーカーがEBを製造していることだ。

 EBの性能を上げるために、他社は機械自体である程度の精度を出しソフトで処理しているが、同社では機械でギリギリの精度を出し、ソフトで処理している。工作機械メーカーならではの味を出している。

 ソフトの話の前にもう1つ。
 EBは電子をコントロールしている関係上、環境変化に非常に敏感である。マスクの材質や常温でのレーザー測定など全ての因子を割り出し、計算したうえでないと希望する線幅や一定の結果が得られない。一般にHOYAガラスのマスクが有名だが、ユーザーにより選択するガラスの材質が微妙に違い、この材質の補正を施さないと好結果が得られない。しかし同社製EBにはガラスを検知する機能が備え付けられており、ガラスの違いによりサービスマンがいちいちユーザーに出向くことがなく、ユーザー自身による補正が可能だ。

 ある雑誌に掲載されたスループットは、64Mビット相当で(ICデザインがメーカーによりかなり異なるため)同社より日立の方が10%早いというデータが1年前に掲載されているという。一般的な64Mで2−3時間、256Mで4−5時間必要だ。(東芝機械や日立)

特許は以下の通り。

(発明の名称)電子ビーム描画装置
(出願人)  東芝&東芝機械
【発明の属する技術分野】本発明は電子ビーム描画方法に関する。

 今はまだ買い場ではなく、続きはまた後日。(両津)

 

2001/03/09(金)

東芝機械(東6104) ☆☆
 
 【事業内容】

・成形  射出成形、アルミ・マグネシウム
・プラスチック押出し
・工作機械
・その他  電子ビームなど
  売上高構成 工作機械25%、成形50%、その他25%

【ポイント】

・電子ビーム装置においてアプライドマテリアルズ(イーテックをアプライドが吸収)が7割のシェアを有していたが、東芝機械が5割のシェアを勝ち取り逆転。アプライドの線幅0.16ミクロンに対し、同社製は0.13ミクロンまでの加工が可能。電子ビーム装置のマーケット拡大が予想される。現在のマスク加工用から、2005年を目処に直接描画に進出する。アプライドとの技術差別化については上記の線幅の説明を受けたが、本髄のところは不明。レンズから放射されるβ線がマスクに吸収されパターン形成。しかしながらマスクからの散乱の影響をデータとしてフィードバックしないとある程度のボケが発生。同社では任意の点におけるβ線密度を計測・フィードバックし、マスク成分の密度から算出される理論値と照らしながら照射量を決定しているのか?同社とアプライドの違いが是非とも知りたい。

・プラスチック射出成形機業界は昨年が絶好調すぎた。バブル期よりも多い台数である。今年は台数ベース10%程度のシュリンクとしても依然好調といえそうだ。同社は小中大型全て扱っているものの、メインは中大型だ。ファナックは電動射出成形機でダントツの実力。どの程度バッティングするのか?

・超精密非球面研削盤が伸びそう。

・カメラ・パソコンなどマグネシウムの用途が拡大しており同社にとってフォロー。

・金型加工機がどう展開するか。放電加工と違い電気代が低く、溶剤汚染が皆無と言うが本当なのか? 放電加工との違いを明らかにしたい。

・工作機械は前期赤字、下期トントンになるの?

・射出成形機の調整で今期業績は達成できるか?

 計画した業績は若干のショートを予想する。
 レーダーに引っかからないスクリューを製造するマシンで、ココム規制に抵触した話題は有名。それだけ同社の大型工作機械は技術に定評があった。この技術を活かし、新しい製品群へシフトしつつあり、あとは経営面のチェックが必要。詳細は4月に入ってから。(両津)☆☆

 

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