ソニー(東6758) 2003/02/16更新

2003/01/14(火)

ソニー(東6758) ☆☆☆

 10年単位でみると会計実態は悪化中

2003年は会計の年?

 「年金が将来もらえない」と考える若者がいるという。
国の財政が厳しいからだという。
そりゃそうだ。
わたしは、これも、グローバル化の結果だと思う。
日本人の雇用コストが莫大なのだ。

 たとえば、ソニーの3月末の年金債務と実際の年金資産の差額は4700億円程度ある。
 赤字を経常した1995年3月期でさえ、年金債務と年金資産の差額は1100億円しかなかった。

 それにしても、この数年で急激な肥大化だ。日本の従業員コストは、企業にとって、まさに爆弾だ。
リストラするにしても、いつかは表面化するコスト。

 バランスシートには4700億円のうちの3000億円程度が長期負債として認識されている状態だ。

 本当に日本が土壇場で死にそうな状況であるならば、そのコストを費用化して国際比較しても許されるだろう。

 たとえば、超保守的に5年で費用化するとどうなるか。
⇒約1000億円程度の「かりそめの」費用が今後5年間認識される。(4700億円÷5年)

 さて、バランスシートの資産の部を見てみる。1995年3月期と比べて、2002年3月期で大きく変わったのは、無形資産だ。

 ネットの無形固定資産が95年の825億が02年2500億円とバカみたいに拡大。

 さらに、営業権は1200億円から3200億円、その他の資産が1370億円から5500億円に急拡大。なんだ!? これは??

 保険事業が拡大しているが、これは790億円が3080億円に拡大。

 トータルの「その他の資産」が4200億円から1兆4260億円に拡大してしまった。「その他の資産」はなんでしょうか? わかりません。

 しかし、これらの営業権は、将来の費用を資産化したものですから、どんどん増えているというのは、いけません。

 いっそのこと、費用化してみようと考える不埒な投資家が出てきてもおかしくありません。

 営業権や無形資産を今後5年で費用化するとどうなるか。
⇒1兆円を5年で割ると2000億円/年。
かりそめ費用が追加で2000億円!これはひどすぎる。
でも、数字のお遊びですから、ご容赦を。(ソニーのIRの方、お許しを! 他意はございません)

 さて、おまけに繰越税金資産が1500億円あるので、これも5年で300億ずつ費用化しましょう。

 そうすると、来年から増える費用は、3300億円です。なんとまあ、営業利益より大きいということになりました。まったく、失礼しました。

 さて、5年平均の営業利益は2000億円台ですから、今後、5年で5000億円程度赤字になるとします。
そうなると、BPSは2000円程度に悪化します。
PBRで2倍以上ですね。
PERはありません。

 それが、会計の認識の違いで、こんな結末になってしまう。
非情にけしからんことに、会計はどんどん厳しくなる傾向にあります。
国際比較をしなければ、株価はわからないのです。
しかし、国際比較をする前に、BSを調整しなければならない。
BSを調整すると、EPSもBPSも変わってきて、これまでの常識的なPERのレンジが通用しなくなってしまう。

 みなさん、今年は減損会計など、固定資産にもメスが入ってきます。
今年は、腰をすえて、会計のお勉強をしてみてはどうでしょうか。(大原)

 

2002/04/30(火)

ソニー(東6758) ☆☆☆

◆今期為替前提130円は慎重さが足りない
◆ゲーム事業の収穫期入りで業績は安定拡大局面
◆株価指標に割安感なく相場のけん引役にはならない

ゲーム部門がPS2の普及で好循環入り。
2002/3期はPS2を1800万台出荷した。
PS2向けソフトは一昨年の3500万から1億2200万本へ急増。
ハードの普及がソフトを伸ばすというよいサイクルに入った。
今期のゲーム部門の前提も控えめ。
ハードは2000万台の予想。
ハードの値下げはあるが、アジアへの生産シフトと半導体のコストダウンでハードの採算性はある程度確保できる見通し。
ゲーム部門で350億円程度の増益となろう。

為替の前提は1ドル130円で決して控えめではない。
為替効果で300億円程度の増益要因。

昨年1000億円かけて人減らし中心のリストラをした効果で400億円程度の固定費削減効果が見込める。

 さらに在庫を大幅に減らした関係で、今期の稼働率の前提が上がっている。
 稼働率上昇により400億円程度の増益効果があろう。
半導体底入れによる部品部門の効果は部材調達のコストアップで相殺される。

営業利益の増益要因は主に4つ。

1)ゲーム部門の好調さ(350億円)
2)リストラ効果(400億円)
3)円安(300億円)
4)そして稼働率上昇(400億円)

 これら要因で前期とくらべて今期は1500億円の営業利益上乗せとなり、3000億円視野。
 ただし、以上の4つの増益要因のうち、3つは一過性のもの。1つだけ、つまり、ゲーム部門だけが持続可能な成長ドライバーであることに留意する必要がある。

そして、バリエーションはすでに45倍。好業績を織り込みつつある水準。
 結果として、経営努力や在庫管理能力などは評価されるだろうが、成長性に着目して、これから大きくバリエーションを切り上げる展開は来ないと予想する。

 前期、大幅な赤字となった携帯電話は、今期はエリクソンとのジョイントベンチャーへの移管効果で大幅に赤字は減りそう。

【リスク】
気になる点は多い。
為替の前提は130円で、保守的とはいえない。
昨今の半導体市況の上昇で、部材コストが悪化している。
コスト低減余地が限られている。
どれだけ中国などへの生産シフトが追いつくのかも心配だ。

そして、設計力でも色があせてきている分野が目立つ。
とくにDVD/PC周辺機器などは、アジア勢の追い上げに対処する必要がある。
今後の鍵となる半導体設計で世界のファブレス企業の設計力に対抗しきれているとは思えない。
早急な強化が必要だろう。

なぜならば、ソニーが目指しているのは、インテル(ハード)とマイクロソフト(ソフト)の融合であり、ビジネスモデルとしては、半導体開発がキーである。

 半導体設計こそが単なるセットメーカーに終わらないソニーのチャレンジ精神を現時点でもっとも具現している重要なポイントである。
 東芝をファウンダリーのように使いこなす厳しさが、ソニーには求められる。

 在庫削減はよいが、主力のエレクトロニクス部門で守り一辺倒の印象がある。
ミドルウエアの強さが開発に活かされる日が来るのか?
なんでもかんでもつながるという複合機的な発想はいらない。
ネットワーキングはニーズではない。
そんなこと消費者は求めてない。
強烈なインパクトのある新商品がない。
官僚主義的な大企業病の兆しなのかもしれない。

【CF分析】

 ネットキャッシュフローが700億円へプラス転換。
大幅な在庫削減が効いた。

 投資一巡で、サイクル的には今後も改善が続く。
今期は2000億円のネットCFを予想している。
CFからは株価は適正水準。
参考資料:ファブレス企業の設計力とソニーの半導体設計力の比較
 
台湾ファブレス
ソニー
CD−ROMチップ数
1チップ
3チップ
DVD−ROMチップ数
1チップ
3チップ
CD−R/RWチップ数
2チップ
4チップ

 ソニーと世界との差はアナログCMOSのインテグレーションに起因する。
ソニーは世界標準から、半導体設計力では、かなり「遅れている」のだ。

⇒危機感をもって業務に励んでいただきたい。
(大原)

※誠に勝手ですが、来週シリコンバレー出張のため、5/7(火曜日)はお休みします。

 

2002/01/29(火)

ソニー(東6758) ☆☆☆

 3Qはエレクトロニクス部門では在庫回転率1.3〜1.9ヶ月へと悪化。市場は「これではなかなか強気なれない」と若干弱含みの展開となっている。

とはいえ各アナリストとも来期営業利益は次々と上方に修正している。いまコンセンサスで2700億円程度になっている。数ヶ月前は2000億程度だったから、確実に業況は改善している。

それではいつ強気になれるのかという点だが、なかなか難しい。ゲームは実はハードウエアでかなり儲けている。これは来期以降、値下げ減資として戦略的に使われるだろう。そうなると、ソニーのここからの株価上昇は、エレクトロニクスの牽引しかない。

しかし、前回の台湾レポートでお伝えしたように、DVDなどはアジア勢との競合が厳しくなっている。

3G携帯、有機ELなど、前向きな製品投入の本格普及期が待たれるところ。(大原)

 

2001/11/13(火)

ソニー(東6758) ☆☆☆

 そろそろどうだろうか?

 来期営業利益2100億円程度と見ている。これはやや強気の数字かもしれない。ゲームは心配ない。映画や音楽も大丈夫だろう。エレクトロニクス部門は、今年500億円近い携帯電話の不具合やリストラ損から開放されるだけで大幅な増益になる。

 ただ、AV市場は方向性が定まらない。ブランドが強く、他のAVメーカーに比べて悪化速度が遅かったため、AVがこれから悪くなるという可能性も高い。

 楽しみなのは4月に行われた組織改革で、半導体の開発を機器やビジネス毎ではなく、各ビジネスユニットを包括するかたちで共通のプラットフォームを組織として作ったこと。
 あたりまえといえばあたりまえのことだが、これまでやってなかった。これにより、たとえば、デジタルカメラとデジタルビデオカメラでいままでは別々に開発されてきたLSIの共通化が今後は図れる。遅まきながら、EMSとファブレスへの対抗策を打ち出したということで、数年後投資家の評価は「結局は日本に半導体企業はソニーしかなかった」ということになりかねない。

 日本で中期的な競争力を維持できる可能性のある企業だが、バリエーションに割安感が乏しかった。

 来期あたりのEPSでようやく正当化できるところまで下落したため、これまでアンダーウエイトとしてきたわたしどもの運用方針も今後変えていく可能性がある。(大原)

 

2001/02/08(木)

ソニー(東6758) ☆☆☆

 【ディスプレイ戦略】
・高温po−si
 技術上14インチまで、実際は8.9インチまで。社内6割、外販4割でターゲットはビューファインダー。
・低温po−si
 豊田織機と合弁。現在ソニー製品のみ。有機EL用途を視野に。但し発表していないものの、2年以内に能力増強の可能性が高い。
・有機EL
 中小型向けに2003年度プロダクト予定。蒸着はトッキという噂(駄洒落会長)。但し、先般のパネルにはボツボツがたくさんあり、レーザーで焼いていない様子。なぜこの時期にラボベースの試作をいきなり出したか不明。しかしよくよく考えると意味が理解できる?
・PDP
 富士通−日立からOEMを受ける。
・FED
 キャンディ???社との共同で13.2インチパネルを試作済み。国内業者と提携による開発はノーコメント。
・プロジェクター
 かなり力を入れている様子。TIのDLPには見向きもしない。新型冷極管開発をどうするのか?

【映像デバイス】
 99年度1000億、今年度1500億の売上はほぼCCD。富士のハニカムは驚異にならずとのコメント。更なるシェアアップのためにクオリティを高める。今後はCMOSが飛躍の可能性あり。現在猫型アイボの搭載のみだが、CCDのようにシェアを取りに行く。CMOSでは後発だがクオリティで勝負。生産は国分、長崎、大分。大分は後工程。売上が大きく伸びる可能性あり。

クリスマス
 12月に売上はかなりの減速で、在庫は9000億円オーバー。それでも米国の在庫が前年比100億しか増加しなかったのは、さすがソニーというアナリストもいるが、それは間違いで会社も認めている。
 生産と消費国の関係をみればすぐわかる。日本からの輸出がかなりあり、米国分が日本の在庫となって表れている。アイワの表向き在庫は4ヶ月だが、船で輸送中の在庫を問い詰めると、実際の在庫はもっと多いことを白状。6ヶ月近くありそう。
 ソニーは自社ブランドの在庫9000億オーバーをブランド維持のため、価格下げを行なわず、この1−3月の生産調整で7500億まで圧縮することを計画。しかしこの数字はかなりの努力目標に近く、自信はなさそう。しかも春物の新製品投入が控えており、新製品の価格設定にも影響が出そう。その場合は新製品投入に遅れも発生するかもしれない。
 いずれにせよ4−6は良い状況にあらず。但し現状を考えれば4−6が底になり7−9は浮上しよう。

 最後に、今回発表した有機ELはSTのおける立場と、低温ポリ・高温ポリ・ELの用途を考慮するとおもしろい展開になりそう。蒸着が気になるが、量産EL蒸着の技術が無いトッキの釜を使って成功するのか?(東北パイオニアの量産ラインはトッキの蒸着釜だが、中の蒸着装置は東北パイオニアオリジナルであり、トッキとの共同開発ではない)

 試作品はレーザーで焼いていないこともあり、かなり粗悪なもので汚い画面。東北パイオニアとは雲泥の差。ゴールドマンサックスの寺西氏は、画面中心にあった緑色のたった1つのボツのみを指摘していたが、それは遠くから見ていた為。ELの素子は10センチ位の至近距離でみないと良くわからない。私が見た限りでは沢山のエラーが存在していた。

 ソニーの蒸着特許はアルバックとかなり異なり、フマキラーの原理とは全く違う。蒸着に果たして成功するのか?(両津)

 

2001/02/07(水)

ソニー(東6758) ☆☆☆

 両津さんにソニーの有機EL会見に参加していただきました。

【有機EL】
(1)ターゲットは、中大型画面。CRT代替の有力候補。2003年量産。
(2)低分子を選択。
(3)ソニーはこれまで、ポストCRTは、FEDだと主張していた。
(4)CNT−FEDは面白いが、ソニーのFEDはスピント型。億近では、スピントでは絶対駄目だと思っていた。
(5)ソニーは、スピントに見切りをつけて、CNT−FEDへ行くべき。ELは、低分子を選んだことを評価したい。

なぜ、小型化できないのか?
(1)CRT代替であり、大画面から狙いたい(小型化できないのではなく、やらないというソニーの正式な理由)
(2)半導体エネルギー研究所などTFT回路に関する基本特許を逃げたい。なんだかんが言って、ELで通常の1素子2トランジスタを1素子4トランジスタにした。これで電流制御が安定する。しかし、その代償も大きい。トランジスタ数を倍にすることにより、失うものも大きい。
(3)ピッチが粗くなる。また、能動素子が増えた分、単純に消費電力が上がってしまう。小型は無理だろう。
(4)小型EL向け戦略は別にあるのだろう。その選択肢を残した(ここまで深読みするのが億近の面白さ…でも、間違いも多い。)。

シーリング。中空がない。
(1)EL特有だった排気工程、ゲッター注入作業を不要にしている。
(2)無機材料で透明シールでELの天敵、水分をブロックしている。1cm程度に薄く出来る。面白い。

【問題点】
(1)寿命。目標1万時間。これは想像以上にやっかいだと思っています。(大原)

 

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