イトーヨーカ堂(東8264) 2003/02/16更新

2003/01/31(金)

イトーヨーカ堂(東8264) ☆☆☆☆

 駄洒落商会会長です。
 月初に冴えない展開が続いた国内株式市場も、外人投資家の継続的な買いに支えられ、月半ば以降かなり楽観的なムードが高まりました。しかし、月末にかけ再び「持ち合い解消売り」「年金の代行返上にともなう売り」など需給面の悪化により、再びバブル崩壊後の安値を更新しようかという状況です。
 消費環境のさらなる悪化への懸念から、小売セクター各社の株価パフォーマンスもかなり厳しくなっています。中でも目立つのは、イトーヨーカ堂の株価の下落ですね。

 国内GMSは、ダイエーが1972年、三越の売上高を抜き去り、国内小売業界売上高トップに君臨して以来、約30年が経過しました。「第一次流通革命」をリードしたGMS各社ですが、マイカルが経営破綻、ダイエーが主力取引銀行3行から巨額の金融支援を受け再建途上、西友が米国Wal−martの傘下に正式に入るなど、「30年サイクル」に飲み込まれたかに見えます。このなかにあって、イオン、イトーヨーカ堂が「2大陣営」として健在ぶりを示していますが、両社の株価がこれほど接近したのはこの10年なかったかと思います。

 02年8月中間決算、さらには足元の業況からしますと、イトーヨーカ堂がこれほど売られるのは、需給面の特殊事情しかないように思うのですが。セブン−イレブン・ジャパンとともに「PERの高さ」を指摘する向きもありますが、今に始まったことではありません。むしろ、中期的な収益モメンタムはむしろ強まっていると判断しています。
 ただ、マーケットがこのような状況である以上、それに逆らったとて、個人投資家の方が儲かるものと思えません。当面は低位株投資などが有効なのでしょうが、イトーヨーカ堂に関しても念頭に置いておいていただければ、と思います。(駄洒落)

 

2001/05/31(木)

イトーヨーカ堂(東8264) ☆☆☆

 駄洒落商会会長です。
 転職にあたりましては、多くの皆さんからエールをいただき有難うございました。おかげさまで充実した日々を過ごしています。

 本日は、イトーヨーカ堂の個別取材に行ってまいりましたが、その一端をご報告したいと思います。

 今回のポートフォリオバトルの銘柄に採用していますが、その理由の一つは昨年11月以降の同社の価格政策の転換です。昨年10月20日の「イチオシ」で取り上げていますが、同社は従来、「価格」をそれほど重視してきませんでした。この点では、いち早く「低価格」路線に踏み切ったジャスコの後塵を拝する結果となりましたが、11月以降、食料品、住居関連中心に価格政策を転換しています。ただ、仕入段階から準備をした訳ではなく、まず販売価格を引き下げたため、当然のことながら粗利の低下を招くとともに、販促コストがかさむことととなりました。2001.2期の単独営業利益が48%減益となった要因のひとつといえます。

 しかし、この効果はまず客数増に表われており、既存店の増収率においても大手GMSにあって健闘が目立ちます。衣料品においてもPB商品「IYベーシックス」「ライフ&ビューティ」に本格注力、前期末の衣料品全体の売上高に占める割合は15%、今期は40%を目標としています。値入れを従来より低く、数量を稼ぐ戦略を鮮明にしていますが、PB商品比率の上昇によって、粗利益率も確保できることになります。

 しつこく繰り返しますが、同社がこのような「価格重視」の戦略に転換したことは非常に意味のあることです。というのは、同社の売場効率(1m2当り売上高など)は抜群であり、粗利、経費などを勘案すると、かなり思い切った価格設定が可能となるからです。

 今年の夏はかなりの猛暑とのことですが、よほど個人消費が落ち込むようなことがない限り、同社はかなり利益水準を回復するものと予想します。株価は6000円台前半まで、再度調整していますが、仕込みの好機ではないでしょうか。(☆→☆☆☆

 なお、海パン氏の再度の登場を心から歓迎いたします。今後とも宜しくお願いします。(駄洒落)

 

2000/10/20(金)

イトーヨーカ堂(東8264)

 前回に続き、「総合スーパー編」です。今回はイトーヨーカ堂(8264)を取上げます。

 イトーヨーカ堂グループは、決算説明会をまとめて行います。イトーヨーカ堂、セブン−イレブン・ジャパン、ヨークベニマル、デニーズジャパンと各社経営陣が順次、説明を行っていくわけですが、冒頭、鈴木敏文イトーヨーカ堂社長(グループ代表)がグループの経営方針について1時間弱のスピーチをするのが常となっています。

 鈴木代表が毎回のように言及するのが「マーチャンダイジング(商品政策)の重要性」です。 同社の場合、昨年は値下げロス(売れない商品を値下げして売り切ることによる損)が600億円、機会ロス(売れ筋商品が品切れとなることにより販売チャンスを逃す損)が300億円があったと同代表は力説します。こうしたロスを減らせば、黙っていても利益は増加する、と。

 これは、同代表が、常務時代にイトーヨーカ堂経営陣の反対を押し切って開始したセブン−イレブン・ジャパン、また80年代初頭に業績の悪化したイトーヨーカ堂で実施した「業革」での成功体験に基づいています。

 70年代半ば、加盟店が増加しつつあったセブン−イレブンで、オーナーから「売れ筋商品の欠品が頻繁に発生する」とのクレームが相次ぎました。社長であった鈴木代表は、1店平均の期末商品在庫が約1000万円という状況下、なぜ品切れが起こるのか真剣に検討。
 「売れない商品が在庫の多くを占めて売場をふさぎ、肝心の売れ筋商品の品切れを招いている」との仮説に辿り着き、これを実際に検証した結果、仮説は実証されたのです。

 1店平均の在庫金額が減れば減るほど粗利益率が上昇し、1店平均の売上げ(日販)も上昇し続けたわけです。これは、従来の「在庫が多いほど売り上げを伸ばすことが出来る」との流通界の常識を一変させる革命的なことでした。

 「買い手が価値を選択し始めた」との意を強くした同代表は、82年に開始されたイトーヨーカ堂本体における「業革」においても、「不良在庫の一掃」を徹底的に推進しました。
 この結果、82年を100とした在庫水準は、店舗数増加や売上げ増を実現しながらも85年には72.4まで低下。逆に粗利益率は82年の25.9%から85年には29.3%までアップ。また、営業利益水準も82年を100とした場合、85年には176.4と大幅に伸長したのです。

 この数年の未曾有の消費低迷下でも同代表は、先に述べましたように「マーチャンダイジングの重要性」を強調し続けています。ただ、私が気になるのは「価格政策」です。同代表は、「必ずしも安い商品が売れるのではない。消費者は価値ある商品を買うのだ」との姿勢を崩しません。

 この中間期、イトーヨーカ堂の既存店売上高は、前年同期比9%減と大手6社の中で最大のマイナスとなりました。懸念されるのは客数が同7%減と落ち込んでいることです。
 小売各社はファーストリテイリングなどの例外を除いて、概ね既存店増収率はマイナスとなっていますが、その内容は「客数」ではほぼ前年水準をキープするものの、「客単価」が大きくマイナスになるというパターンが多くみられます。

 あくまで「不良在庫の一掃、ロス率低減」を掲げ、主力PB「IYベーシックス」の価格帯を上方へ数千円拡大するなど高付加価値化を狙うイトーヨーカ堂の路線はさらなる「顧客離れ」を招かないのでしょうか。明確な「低価格路線」追求するジャスコとの対比を含め、注視していきたいと思います。

 また、イトーヨーカ堂は、小売セクターでは時価総額NO.1であるセブン−イレブンを連結子会社として抱えるホールディングカンパニーとしての評価も重要です。その点から株価の動きを見ていくことも必要でしょう。

(単なる情報提供に止めます。イチオシ度)(駄洒落商会会長)

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