マツモトキヨシ(東9875) 2001/11/30更新
2001/11/30(金) 

マツモトキヨシ(東9875) ☆☆☆

 同社は、巧みなメディア戦略と売場の演出により、「マツキヨブランド」を確立。若年層の支持を得て、業容を拡大してきました。

 しかし、29日の説明会では、松本社長より、今後は安さを全面的に打ち出す価格訴求戦略に転換し、「低マージン・低コスト」型の経営を目指す旨の表明がなされました。
 来期以降、年間90店舗という高水準の新規出店を継続することを考えますと、コスト管理は容易でないとの印象を持ちました。

 「低マージン・低コスト」型経営で収益拡大を実現している小売企業の代表例は、しまむら(8227)です。同社にしても、販管費が計画以上に膨らんだりしますと、容易に減益となってしまいます。

 マツキヨは、前上期が6期ぶりに減益になりますと、すかさず、経費削減を徹底、前下期は、半期ベースでの営業最高益を更新しました。短期的なコストコントロールの力量を示した訳ですが、今回はどうでしょうか。(駄洒落)

 

2001/06/06(水) 

マツモトキヨシ(東9875) ☆☆☆

 久々のフォローです。

 01年3月期決算発表は5月24日、決算説明会は31日に行われました。発表されました連結業績は、売上高で2317億円、前期比12.2%増、営業利益で102億円、同0.9%減、経常利益で111億円、同1.0%増と従来予想を大幅に上回る結果となりました。

 この要因は、00年9月(中間)期において2ケタ営業減益を余儀なくされたことを受け、過度の値引きを避け店頭売価を細かく設定したことで粗利率が下期だけ見ると横ばいとなり、予想したほど下落しなかったこと、広告宣伝費の伸びを抑制したこと、などです。ちなみに、通期の粗利率は24.7%、同0.3ポイントのマイナスで、内訳は薬粧事業25.6%、スーパー事業22.5%、HC事業17.9%でした。また、通期の既存店増収率は同3.7%減(上期が同2.0%減、下期が同5.3%減)で、内訳は薬粧事業が同3.3%減、スーパー事業が同4.8%減、HC事業が同5.1%減となりました。

 このように、下期業績は予想外に健闘したのみならず、半期ベースでは単独売上高で1156億円、上期比10.8%増、営業利益で58億円、同7.2%増、経常利益で64億円、同7.9%増と過去最高益を更新しています。

 昨年11月の中間決算説明会の時点では、収益挽回策にいまひとつ迫力を欠いたことを思えば、短期間のうちに運営体制を建て直しつつある点は評価出来るものと考えます。業績発表を受けて、セルサイド有力アナリストが相次ぎ投資判断を引き上げているのもうなづけます。

 同社は過去26年間、創業者松本清氏の長男・松本和那社長(現会長、衆議院議員)のもと、次男・南海雄副社長(現代表取締役社長)がドラッグストア(薬粧)事業を統括、三男・鉄男副社長(現非常勤取締役)がスーパー事業を統括する「トロイカ体制」により会社経営を行ってきましたが、前中間期における減益決算を受け、南海雄氏が社長に昇格。あわせてスーパー事業をも統括することとなりました。こうした「経営一本化」も好影響をもたらしているものと考えられます。

 南海雄新社長は、当面既存店の徹底的見直しとテレビCMを含めた販管費の抑制に注力する意向です。既に3月にはスーパー事業で最も巨額な赤字を計上していた小金店を閉鎖、今上期中に不採算4店舗のリストラに着手する計画です。また、ドラッグストア事業でも既存501店舗において10〜15店舗にスーパーバイザーを配置(従来は20〜30店舗にひとり)するなど販促活動を強化。特に他社との競合が激しい100店舗では徹底した価格戦略を採用してシェア獲得を目指す意向です。

 また、広告宣伝費を前期の67億円から、テレビCM中心に約15億円を削減するほか、契約改定期を迎える65店舗で家賃見直し交渉を行うなどコスト削減を徹底しつつ、PB商品の比率アップに注力、粗利率改善を目指します。なお、新規出店は60店舗を計画、うち都市型店舗6割、郊外型4割と再び同社が強い「都市型」の比重を高める計画です。

 さらに、同社が今後注力しようとしているのが「調剤事業」です。調剤事業を簡単に説明しますと、「患者の方が病院で処方箋を受取り、ドラッグストア(調剤薬局)で薬を処方してもらう」こと、よくいわれる「医薬分業」のことです。米国では一般的ですが、わが国でも急速に拡大しつつあります。その背景として政府の「医療費抑制政策」があげられます。政府が薬価を切り下げて利幅(薬価差益)を小さくする政策を採用した結果、医療機関にとって従来はドル箱だった調剤が、利益を生まない部門になりつつあり、医療機関が院外の薬局に薬の調合を任せる割合が高まっています。この「医薬分業率」は、90年度の12.0%が99年度には34.8%まで上昇、薬局調剤事業の市場規模は99年度約2兆3000億円に達しました。

 さらに、政府はこうした流れを促進するため、医療機関が処方箋を院外調剤薬局に出せば、「処方箋料」が保険から支払われるよう制度を改正しています。ただ、現在の調剤薬局の多くは、病院の近くで営業し、調剤の大半をその病院に依存する「門前薬局」であるため、厚生労働省は、門前薬局に処方箋が集中しないように、「処方箋が一定枚数を超えると調剤手数料が減る」などの措置をとり、処方箋を住宅街や商店街などの薬局に分散させる方針を打ち出しています。このため、さらに医薬分業比率が高まり、ドラッグストア各社の調剤部門の売上高が伸びていく可能性が高まっています。

 ただ、この調剤事業がすぐにも収益寄与するかどうかに関しては疑問符がつきます。薬剤師の確保、その人件費など大きなコスト負担が予想されるからです。

 現在、国内ドラッグストア各社の間では、アライアンスを組成することによりスケールメリットを追求、経営効率改善を目指す動きが活発化しています。ジャスコを中心とする「イオン・ウエルシア・ストアーズ」、さらに同社と高田薬局(静岡市)の提携、サンドラッグとカワチ薬品の提携などですが、アライアンスの目的にはブランドイメージアップによる薬剤師の確保や調剤薬局の経営ノウハウ共通化なども含まれます。

 たとえば、「イオン・ウエルシア・ストアーズ」を構成する一社であるスギ薬局(愛知県安城市、ジャスコ出資比率は11.6%)は、調剤併設のドラッグストア経営により急成長してきましたが、その経営ノウハウを共通化するわけです。

 ともあれ、調剤事業のみならず、他部門でも各アライアンス間での競合はかなり激しいものになることが予想されます。同社もとりあえず、経営基盤の建て直しは評価出来るものの、すぐに以前の成長軌道に回帰するとは考えておりません。株価も底値からはかなり戻しています。当面、新社長のもと、同社の状況を注視したいと思います。(☆☆→☆☆☆)(駄洒落)

2000/11/29(水) 

マツモトキヨシ(東9875) ☆☆

 昨日、中間決算説明会がありました。
 会社側の説明内容は、前回お伝えした範囲を出ていません。今後の利益回復策について今一つ説得力を欠いた点が本日のストップ安に現れていると思います。当面、売り圧力は継続しましょう。

 しばらく状況を注視したいと思います。評価は継続します。(駄洒落商会会長)

2000/11/22(水) 

マツモトキヨシ(東9875) ☆☆

  3日連続ストップ安です。昨21日に発表されました2000.9期中間業績が大きな失望を誘いました。
 単体の売上高は1,137億円、前年同期比14%増、営業利益は41億円、同11%減、経常利益は45億円、同8%減と6期ぶりの減益を余儀なくされています。私としては自らの不明を恥じるのみです。

 このところ、各社の中間決算説明会に奔走しており、昨日も当社の決算発表の内容を確認したのは場が引けてからでした。泡を食って広報担当の方に連絡したところ、「アナリストの方々のお叱りを受けてばかり」と嘆かれることしきり。「勝ち組」としての評価が定着していた感があっただけに、大きなネガティブサプライズとなったようです。

 ちなみに、今中間期の既存店売上高は、前年同期比2.0%減。内訳は、薬粧事業が同1.1%減、スーパーが同6.8%減、ホームセンターが同0.6%増です。また、粗利率は、医薬品が前年同期の37.7%に対して今中間期は変わらず。化粧品は23.8%から23.2%に0.6ポイントのマイナス。雑貨が18.6%から16.7%に1.9ポイントのマイナスとなりました。

 現在、100店舗あまりが近接する「100円ショップ」との競合を強いられているほか、総合スーパーなどとの対抗上、低価格指向を強めたことが粗利の低下につながりました。加えて、地代家賃の上昇、広告宣伝費の増加、新店要員の採用増などによる販売管理費の増加が減益要因となりました。

 会社側では、大手医薬品メーカーと提携、採算の良いプライベートブランド(PB)商品の導入を急ぐことにより状況の打開をはかる意向です。現在、PB商品比率は約2%ですが、15%程度まで拡大する計画です。また、調剤薬局の併設も順調に進展しており、12月には90店舗程度に拡大する見込みです。厚生省が医療費抑制の一環として、医師が発行する処方箋に基づき薬局が調剤を行う医薬分業政策を推進しているだけに、要注目の分野です。

 今回の決算発表により、高成長イメージが希薄化したことで、「良品計画」の例にもあるように、株価は当面大きな売り圧力を受けるものと予想されます。しかし、当社は単なる「小売」ではなく、「薬粧」事業を主力としているだけに、別の観点からの評価も必要でしょう。 今回は、☆☆☆☆☆に引き下げ、しばらく注視したいと思います。

 説明会は28日です。また、ご報告します。(駄洒落商会会長)

2000/09/28(木) 

マツモトキヨシ(東9875) ☆☆☆

   マツモトキヨシを取材してきました。
 ドラッグストア最大手企業ということでお馴染みですが、足元の状況からご報告します。

 主力の薬粧事業(2000.3期売上高構成比75%)の既存店増収率は、今期に入って4月に前年同月比5.4%増、5月同1.8%減、6月同5.3%減、7月同3.0%増と推移。4〜7月の累計では同0.2%増となっています。
 ただ、当社は今2001.3期、新店を含めた薬粧事業全体で18%増収を想定していますが、新規出店の寄与により、4〜7月累計は21.9%増と計画を上回り順調に推移しています。なお、8月は既存店が3.5%減、全店ベースでは16.9%増となりました。

 同業のサンドラッグなどと比較した場合、既存店の伸び悩みが目立ちますが、私は今回の取材で、当社が新たな成長ステージに入ったとの印象を持ちました。徹底した広告宣伝、都心部への出店による首都圏ドミナント化により、「ブランドビルディング」に成功しているからです。

 その一環が「医薬分業」の問題です。厚生省は医療費抑制のため、医師が発行する処方箋に基づき、薬局が調剤を行う医薬分業政策を推進しています。国内医薬品市場の拡大は限定的とみられるなか、今後成長が期待されるのは調剤薬局です。

 これを受け、ドラッグストア各社は調剤薬局の併設を積極化しつつありますが、ネックとなるのは薬剤師の不足です。しかし、当社は、圧倒的な知名度に加え、薬剤師手当てを業界最高レベルの100,000円とするなど、薬剤師採用でも他社をリードしています。現時点で、来春新卒の採用も160名弱が既に内定しています。昨年11月には調剤推進部を新設しており、最終的には60%程度の店舗を調剤併設型にする計画です。他社との格差はさらに広がるとみて良いでしょう。

 また、3月に開店した大阪店も順調で、当社トップクラスの売上高を維持しています。当社は今期末までに500店舗を達成、次には全国展開を視野に2007.3期末1,000店体制を目指していますが、地盤である関東圏から離れた大阪店の成功は、「マツキヨ」ブランドの確立を声高に物語っています。JTB、地方の中学、高校から修学旅行の際の「店舗見学」の申し込みが殺到していることも同様です。

 なお、ジャスコがハックキミサワ、ツルハに続きスギ薬局にも出資、全国的な「マツキヨ包囲網」を敷いている、との見方もありますが、ジャスコから当社に対しては、成田SCに続き、富津、柏の店舗にもテナントとしての出店要請がきています。やはり、当社の集客力は魅力があるようです。

 当社は今後、全国展開とともにさらに都心部への出店を推進する意向ですが、そうした場合、当社の既存店同士の競合が予想されます。既に、渋谷などでそうした兆候が現れており、その意味でも既存店増収率の伸び悩みは懸念には及ばないものと判断します。

 今期の予想連結EPSは252円ですが、当社の「ブランド価値」を勘案すれば、PERで40倍までは買ってよいものと思います。すなわち、目標株価は10,000円、来期以降の収益の伸びを想定すれば、さらなる上値が期待できるものと思います。

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